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「Hey,伸二!!」

パァーンという渇いた音が響く。

すると、ジョージはいつの間にか、冷たくなって。かつてジョージと呼ばれた生物はただの塊になっていた。そう、ただの肉塊になっていた。

「これで俺にとってこの別れ方は2人目か・・・・。」

俺は少しだけジョージに会えない寂しさと虚しさをかみしめ、この場を後にした。

スクランブル交差点を歩いている人は何も気にもとめず、歩みを止めない。もちろん、俺も歩みを止めない。俺は雑踏にまぎれていった。


「この世界はおかしい。」

「どうしたんだ急に?綾人?この世界はいたって平和だと思うぞ?もしかして・・・。政府批判ならよそでやってくれ。少なくとも俺は満足してるんだけど。」

俺は平坦な声で声の主にそう答える。事実、俺は満足している。

「確かに、今の政府が今の生活を作っているのは事実だが・・・・。あらゆる問題が消えたのは事実だ。俺もそこは認めるよ。」

「じゃあ、いいじゃないか。お前の覚悟が足りねえんだよ。」

「お前は覚悟があるのかよ?自分が突然消えてしまうという覚悟が?」

俺は昼間のジョージのことを思い出す。しかし、思い出すだけで、何も恐怖など感じない。それが当然なのだから。

「別いいじゃねえか。そういう仕組みなんだから。」

「俺はお前みたいに割り切れねえよ。そういえば、昼間にジョージが死んだのを見たんだって。」

「あぁ、尊い犠牲になったのを俺は見たよ。ほんと偶然だったんだ。俺を見つけてさ。声をかけてきたんだ。それで俺が振り向いたらジョージは死んでた。確かに悲しかったよ。虚しさを感じたよ。でもな、これで社会が回ってんだ。文句は言えないし、俺たちにどうこうできる問題じゃない。」

「まあ、そうなんだけどさ。」

綾人はグイッと日本酒を飲む。

「でも、やっぱ親友が死ぬと少しやりきれない。この別れ方は俺は三回目かな。お前は二回目だっけ?」

「あぁそうだな。裕子以来だよ。」

「そうだな。あれも・・・・もう五年前か・・・。」

「・・・・・。お前今日ちょっと飲み過ぎだ。少し自重しろ。酒でくたばっちまうぞ。」

「いいだろ。別に今日くらい。明日は休みなんだ。少しくらい飲み過ぎたって誰も文句は言えねえよ。それにしても・・・・ジョージがなあ。」


俺たちはそれからずっと飲んでいた。少し俺も飲み過ぎていた。


 思えば、世界がこうなってしまったのはいつの事だったろうか?四十年もの前の事だ。かつて人間は様々な問題を抱えていた。増え続ける人口、足りない食物、それに伴う飢餓、貧困、戦争。血に血を上塗りするような日々を人類は過ごした。先進国と呼ばれる国々はこれらの問題を先送りにしてきたが、これらの問題はいつの間にかこれらの国を巻き込み無視できない問題になっていた。戦争がいくつも起きた。何とか核戦争は起きなかったが、その戦争が起きるのは時間の問題であるかのように思われれた。この時人類は思ったはずだ。そうか、人間という生物は死に絶えるのかと・・・・。しかし、そうはならなかった。事実、俺は今こうしてちゃんと生きている。

「国枝一歩か・・・・・。」

この名前はその頃のわが国のトップの名前だ。こいつの提案が人類滅亡防いだのだ。この時の出来事を「国枝宣言」として人々の記憶に刻み込まれると同時に、国枝という名前は世界で一番有名な名前になったと聞く。

「少し頭が痛いなあ。二日酔いかなこれは。」

俺は誰もいない家で少し痛む頭を押さえる。

 「国枝宣言」の内容とは・・・・・・。人口の増加を抑え、さらに食物不足を解決した。コンピュータでランダムに人を選び殺害し、それを食料として供給する。これが国枝宣言の内容だ。当時の「人権」と呼ばれる権利を擁護する団体からはかなりの抗議があったし、全世界からかなりの反発を受けた。だが・・・・、これを上回る提案はなかったし、未来の人類の英知に任せて何とかする。といった悠長な時間もなく、この提案は通ってしまう。結果、世界は救われた。百二十億いると言われた人口はその四分の一になり、食物も不足になるということはなくなった。国枝一歩はこれらの功績からノーベル平和省を筆頭に数々の賞を受賞し、今も我が国に多大な影響を与えている。それが現在の世界だ。

 俺は冷蔵庫を開け、ミネラルウォーターを飲む。少しはこれで二日酔いが軽くなればいいのだが。裕子が死んでから、もう五年。俺はもう一杯水を飲んだ。全然美味しくなかった。




短い話になると思います。一週間で書き終えようかなあ。とか漠然と思ってます。うーん。でも自分の立てた予定なんて守られた試しがないですけどね(笑)

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