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だいはちわ

ある夜、妹に頼みがあり、部屋に向かった俺はドアを開けた瞬間、後悔した。

ノックはした。

変な声だったが、返事が来てから開けたぞ。

だが、何故その状態で入室の許可を出した。

妹は、床に座り込み、何とか上体を腕で支えている状態だ。

産まれたての仔鹿を彷彿とさせる。

何かプルプルしてるし。

顔は俯いているが、耳が真っ赤だ。

普通、いくら家族とはいえ、そんな体勢で迎えるアホが何処にいる。

あ。コイツ、アホだった。

クッションをベシベシと叩き、身悶えている。

息も荒い。

もし相手が男で弟だったら「取り込み中すまん」と退室している所だ。

「頼みがあるんだが、いいか?」

「はぅ~!天使…!天使がいるっ!!ハァハァ」

帰って来い。

そして頼むから聞いてくれ。

足の短い小さなテーブルの上にノートパソコンとマグカップ。

あらかた、ネットのサイトで同人でも見てたんだろうが…。

何を見たら、そんな状態になるんだ。

お前、変なサイトに行ってないだろうな?

昔、ウイルスソフトの更新を忘れて一台壊してるのを忘れてないよな?

…忘れている気がする。

「おーい。蓮?聞いてるか?」

「…ほぇ?なーに?今、ものすごくハァハァなぅ!なんだけど」

それは見りゃ分かる。

妹のこんな一面を見させられる俺の身にもなってくれ。

コイツは何故か腐女子な事を隠そうともしない。

普通、隠すよな?

男でもエロ本は家族には隠すぞ。

いくら持ってるのを知られているだろう、とは思いこそ、存在は隠すぞ。

にも関わらず、コイツは俺どころか母さんや父さんにまで隠さない。

アニメショップに親を連れて行き、レジの人に堂々と「親公認です!」などとほざいて18禁の同人誌を買う程だ。

18禁は親公認なら良いってもんじゃねぇよ。

店員さん、めちゃくちゃ困ってたからな。

まぁ、それはいい。

今回の頼み事には関係ない。

「しばらく、俺の分の弁当も作ってくんない?」

さっさと俺の用件を済ませるに限る。

コイツのお楽しみタイムは寝る時間ギリギリまで終わらない。

しばらく、仕事が立て込んで碌に昼飯を買いにも食いに行く時間も取れそうにないんだよ。

コイツは自分で弁当作ってるからな。

俺の分もついでに作ってくれ。

初日は母さんに任せたらしいんだが。

弁当箱の蓋を開けたら、一面茶色だったのがショックだったらしい。

それ以来、自分で作っている。

俺は学生時代、全部ソレで耐えたんだからな。

コイツみたいに自分で作ろうという発想も腕もないし。

俺に作れるのはカップラーメンだけだ。

という訳で頼めるのがコイツしかいない。

…こんな時、彼女がいたら違うんだろうな…。

「ほぇ?何日くらい?」

「ん~…二週間くらいだな」

多分、それだけあれば残務処理も終わってる、筈。きっと。恐らく。希望的観測含む。

新しく案件が入って来なけりゃ。

「ん~あんね、今度ね、欲しいキャラソンのアルバムが出るのだよ」

みっともない姿勢から正座に戻った妹が上目遣いで切り出してきやがった。

だが、昼飯二週間分とアルバム一枚。

どう換算しても、アルバム一枚の方が安い。

DVDかなんかを強請られるかと思ったんだが。

アホなコイツには足し算も引き算も難しかったらしい。

だが、材料費は家持ちだし、コイツの懐は一切打撃を受けない。

ただ、手間と時間が掛かるだけだ。

俺にはその掛ける物がない。

「はいはい。分かりました。買ってやるから、頼むぞ?」

「まいどありぃ~」


数日間、和洋中と飽きない様に日替わりで、かつ彩りと栄養バランスが取られている弁当を食った俺は、コンビニ弁当だと不満を抱く様になってしまった。

あのアホはアホな癖に器用だ。


俺の知らない所で、料理上手な彼女と同棲しているという誤解しかない噂が広まっていると知らされ絶望した。

違うんだ!!

妹が作ったんだ!!

だが、これを言うとシスコン疑惑が浮かびそうなので、真実を打ち明ける事にも抵抗がある。

くそっ!もしかしたら俺に思いを寄せている人がいたらどうすんだよ?!

あ。いないですか。すみません。調子乗りました。

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