だいななわ
日付けが変わろうという深夜。
ようやく俺は家に着いた…。
なんで俺の所に持ってくるんだ?!
帰らせろよ!
残業何時間だよ。
サービス残業ですね。わかります。
本当に勘弁してくれ…。
腹は減った疲れた風呂入りてぇ寝たい。
全部一緒に出来ないものか。
ダメだ。
頭がバカになってる。
そりゃ毎日毎日残業だらけで頭がおかしくもなるわ!
「ただいま…」
「おかえり〜」
妹よ。何故お前がまだ起きている。
普段なら既に夢の中だろうが。
「母さんは?」
普段、出迎えるのは母さんなんだが。
「お風呂〜」
「マジか」
母さんの風呂は長い。
そして風呂の後はもっと長い。
俺が飯にあり付けるのはその後か?
母さんが入っている以上、風呂にも入れず、飯も食えない。
空腹すぎて寝れねーよ。
俺に死ねと?
「ご飯、あっためたり、火を通すだけだから、僕やるよ?」
”あっためたり”は温める。を意味する。
コイツの日本語の幼稚さをどうにかしたい。
一応、専門学校通ってただろうが。
ダメだ。
疲れすぎて、いつもはスルーする事にもイラつく。
「頼む…」
「ほいほ」
正直な話、母さんより妹の方が料理が上手い。
母さんの料理が残念過ぎるのもあるが。
母さんが作るより、品数もバランスも良い。
母さんの場合、大皿におかず一つ。とかザラだからな…。
妹はメインと小鉢系を揃える。
基本的に和食が多い。
キッカケが好きなキャラの設定に「好きな食べ物、和食」と書かれていたというアホな理由だが。
自室にスーツやネクタイ、鞄を放り投げ、居間に行ったら、俺の席に緑茶が用意されていた。
ズズズッ
あ〜。美味い。
身体から力が抜けて、今にも寝落ちしそうだ。
俺がコックリコックリと舟を漕いでいる間に出来たらしい。
テーブルには茶漬けと煮物の小鉢に味噌汁。
メインのおかずは何故か生姜焼き。
茶漬けは嬉しいんだが。
生姜焼き…。
重いわ!
今日の夕飯は生姜焼きだったんだな。
そして煮物の小鉢は妹が弁当用に作った余りだと思われる。
俺はモソモソと茶漬けと煮物を食い始めた。
食ってる途中で食欲も復活して、生姜焼きも食ったけどな。
食い終わり、一心地着いていると、お茶を新たに煎れ直された。
食後の一服を堪能している間に食器を片付けて洗い物までしている妹。
女の子らしさを感じないのが謎すぎる。
「じゃ、僕寝る。おやすみ〜」
「おぅ。おやすみ」
お前、まさかこの為に起きてたのか?!
自然過ぎて気づかんわ!
お兄ちゃん、ちょっと感動するぞ。
一日の疲れがほんのりと癒された瞬間。
「あらぁ?お兄ちゃん、帰ってたの?おかえり〜」
「ただいま」
母さん、頼むからちょっとテンション下げてくれ。
キンキン声が頭に響く。
そして甘ったれた口調に腹が立つ。
「ご飯食べた?」
「食べた」
「外で食べて来たの?連絡くれなきゃ、ご飯余っちゃうじゃない!」
話を聞け。
誤解でキレるな。
父さんは何故これに耐えられるんだ?
愛か?愛なのか?!
「家で今食い終わった」
「あら、そうなの?蓮ちゃん?」
「そう」
母さんの長風呂対策の為にな。
母さんがウキウキと台所に行く。
多分、自分の飲み物を取りに。
妹の事だ。
母さん用にハーブティーとか用意してある。
「やぁん♬洗い物まで終わってる!さっすが蓮ちゃん!」
さっすが!じゃねぇよ。
母さん、専業主婦だろうが。
最低限の家事くらいしてくれ…。