だいじゅうにわ
妹は高校に入り、剣道部に入部した。
「高校こそ!部活で青春するのだー!!」
アホは元気で良いな。
俺なんぞ中高で部活に燃えた記憶なんてない。
だが、何故に青春で剣道部。
剣道部ってアレだろ?
体育で軽くやったが、防具は汗臭いし、動き辛いし、視界悪いし。
もっと手軽に青春出来る部活があると思うのだが。
武器フェチなアホには剣道部は魅力的らしい。
「女は強くならねばならないと僕のオトメゴコロが訴えているのだお!」
そんな乙女心聞いた事ねぇよ。
「ふっふっふ!目指せ!てんかとーいつ!」
いつの時代の人間だ。
天下統一は既にされてるからな。
お前はテロ予備軍か。
ところで疑問なんだが
「お前サイズの防具なんてあんのか?」
どう考えても小さいだろ。
あと、リーチ考えると小さい人間には不利としか思えないんだが。
「てんてーが特別にキッズサイズを発注してくれた!…おうふ」
なるほど。
傷を抉ってすまんな。
でもなぁ
「重くね?」
「ウェイトトレーニングはオトメの憧れなのだよ!」
そんな乙女の憧れは聞いた事ねぇ。
「鉄入りの竹刀とかあるかな?ハァハァするお!」
え。それとも、コレが普通なの?
正しい乙女心なの?
…パワーアンクルに目を輝かせるのが?
いや、ねぇわ。
コイツだけだ。
世間の女性の大半は、か弱い可憐な感じだわ。
腕とか細いし。
柔らかそうだし。
コイツの腕も足も筋肉で固そうだし。
コイツだけだ。絶対。
……コイツだけでお願いします。
「蓮ちゃんなら大丈夫よ!強くなれるわ」
母さんと真逆だしな。
違う方向に行き過ぎだが、まだ母さんの方が基本的に女性の典型を過剰にした感じだと思う。
多分。きっと。恐らく。
「強くなって僕がママンを守るからね」
「蓮ちゃん…!」
ハグッ
「嬉しいわ…!パパにすら言われた事ないもの!」
「か弱い女性を守るのは使命なのだよ!ママンは安心して守られておくれ」
「蓮ちゃぁ~ん!ステキー!!」
母娘で宝塚やらんでくれ。
無駄にキメ顔作るな。
俺にやれと言われても全力で断るが。
脳筋アホの癖に一部の女性が言われると喜びそうな事も恥ずかし気もなく言うからな…。
”イケメンに限る”もコイツには難題でもなく軽くクリアだ。
これが養成所の成果か?
いらん副産物でしかねぇな。
「強くなりたい。そこに理由なんてないのさ。実行あるのみ!!始めなければ何も始まらないのだよ!キラッ☆」
「うざっ!」
一年の間は部活だけだったんだが、二年になり物足りなくなったのか。
近所にある道場を探し出して習い始めた。
どっから探してくるんだ。
今時あることにビックリした。
「牙突!」
「お前ちょっと黙れ」