だいじゅうわ
俺の妹はアニメショップに行くと普段よりもテンションが上がる。
だが、実はそれ以上にテンションが上がる店がある。
本人はバレてないと思っているようだが、お兄様にはバレバレだ。
腐女子は隠さないのに、何故こっちは隠しているのかまでは分からんが。
あれはまだ俺が高校生の時。
その頃の妹はまだ父さんの命令と母さんの趣味でロングヘアに不思議の国のアリスのようなワンピースを着ていた頃だ。
修学旅行先が色々な社会問題の影響で京都奈良だった。
何故、高校生にもなって京都奈良!?
中学で行ったわ!という感じだった。
まぁ、俺の旅行先なんてどうでもいいんだ。
当時の妹はまだ俺に引っ着いてた可愛い頃だ。
ウサギのぬいぐるみを抱え、旅行鞄を持った俺は見送りに母さんと一緒に玄関まで来ていた妹に聞いた。
「お土産買って来るからな。何が良い?」
鹿のぬいぐるみとかストラップとか可愛い小物で良いか、と思いながら質問した俺に、衝撃的な返事が。
フリフリのワンピースを着た美少女が。
ウサギのぬいぐるみを抱え、キラッキラと輝かせた瞳が。
血色は良いが、独特なサーモンピンクの唇から。
「ぼくとー!!」
うん?聞き間違えたか?
今、木刀って言ったか?
気の所為だよな?気の所為に違いない。
そう思った俺は聞き直した。
「悪い。もう一回言ってくれ」
ワンモアプリーズ。
「ぼ・く・と・う!」
やっぱり木刀って言ったー!!
マジか。
え。俺はどうしたらいいの?
このチビに木刀買ってくればいいの?
母さんの顔を見る。
「(可愛い小物でも買って来てあげてくれる?)」
「(…そーする)」
旅行から帰って来た俺が可愛い鹿の小物を渡した時、嬉しそうにお礼を言ってくれた。
だが、木刀がないと知ると、ションボリとウサギのぬいぐるみを抱き締め。
いや、アレは絞め殺していたかもしれない。
トボトボと居間で不貞寝しやがった。
その時に発覚したアイツの隠れた趣味というか、フェチツボは。
武器。
恐ろしい事に、あのアホは中二になる前から中二病だった。
最早、産まれながらの中二病と言っても過言ではない。
ヲタクになる前から。
腐女子になる前から。
武器フェチ。
アイツが好きなアニメに剣や魔法のバトルモノが多い理由はそこだと思われる。
その年のサンタさんへの手紙には
『にょいぼーがほしいです』
と書かれおり、親がめちゃくちゃ困っていた。
難易度上げてんじゃねぇよ。