第一話
ダンダンダン!!
ダンダンダン!!
朝早くから、俺の部屋の扉を叩く音が俺の安眠を妨げた。
「カインさん!起きてください!!カインさん!!」
扉の向こうから聞こえてくる女性の声。
あの声には聞き覚えがある。確か、ギルド職員の・・・誰だっけ?
「カインさん!ギルドからの呼び出しですよ!!この扉を開けてください!!」
ギルドからの呼び出し?
はて、俺は何かやらかしただろうか?
「カインさ「うるせぇ!朝っぱらからギャーギャー喚くな!!」・・・・ごめんなさい」
俺は扉を開け、ギルド職員を怒鳴りつけた。
まぁ、素直に謝ったので良しとしよう。
「ったく、朝っぱらから何の用だ?」
「ギルドマスターからの呼び出しですよ」
「ギルドマスターからの?」
「はい」
ギルド・・・雑用から討伐まで、ありとあらゆる依頼を引き受ける機関。
そのギルドに所属しているのが俺達、冒険者だ。
そのギルドの責任者がギルドマスターなんだが・・・
「俺、最近依頼なんて受けてないから、問題とか起こしてないはずだが・・・?」
「内容は分かりませんが、至急来られたし・・・との事です」
ふむ・・・・まぁ、とりあえず行ってみるか。
「了解。支度したらギルドに向かうわ」
「では、確かに伝えました」
職員はそう言ってお辞儀をすると、帰っていった。
う~ん・・・なんだか、面倒事の匂いがプンブンしてきやがった・・・。
俺が住む街。フェニールはフェニエル国の首都だ。
街の中心にはフェニエルの国王が住むフェニール城がある。
だから、この街は城下町でもあるが故に観光客や商人、貴族や騎士なんかも沢山いる訳で・・・。
「今日も人が多いなぁ」
早朝にも関わらず、中央通りは大勢の人で賑わっていた。
「さて、さっさとギルドに行きますか」
ギルドに着いた俺は、その入口である扉を開けた。
ギルド内は今日も依頼を受けようと数人の冒険者が掲示板の前に立っていた。
「あ、カインさん」
「よぉ」
今朝がた、俺の部屋に訪れた職員に手を挙げる。
「ギルドマスターは?」
「奥の執務室でお待ちです」
そう言われて、俺は執務室へと足を向けた。
「いるかい?」
コンコンと、二度とノックをして俺は扉を開ける。
「良く来たな。まぁ、掛けてくれ」
促されるまま、俺は部屋の中のソファーに腰掛けると対面にギルドマスターが腰掛ける。
年は50代前半くらい。少し髪に白髪が混じるおっさんだ。
「用件は?」
「単刀直入だな。まぁ、その方が話が早い」
そう言って、ギルドマスターは一枚の紙をテーブルの上に置いた。
「?」
「とあるパーティーが受けた依頼だ」
その紙を手に取り、俺は目を通す。
「・・・これがどうかしたのか?」
なんの事はない依頼。依頼内容は遺跡のマッピング。最近発見された遺跡の先行調査だ。
考古学者からの依頼からして、魔獣やトラップの調査、そして遺跡内のマップ作成だ。
「その依頼を受けたパーティーが、未だに帰ってこないのだ」
「はぁ?」
依頼を受けた日付が二週間前。場所はここから丸一日掛ければ行ける距離。なのに、未だに帰ってこないと言う事は・・・・
「やられたのか?」
「分からん。受けたパーティーは名持ちのパーティーだ。実力は申し分ない・・・。にも関わらず・・・」
「未だに未還・・・か」
パーティーの名は『紅蓮の翼』か。
かなりの実力者揃いのパーティーだと記憶している。
「で、この件と俺、なんの関係があるんだ?」
「君に頼みたいのは、このパーティーの生死の確認だ」
「・・・・ハァ?」
俺は思わず妙な声を出してしまった。
基本、ギルドは依頼途中の冒険者に関しては関知しない。
生きていようが死んでいようが、それは自己責任なのだ。
「そのパーティーに、ある貴族の娘が参加している。その親御さんから圧力が掛かってね・・・」
「とんだじゃじゃ馬だな。しかし、それは俺じゃなくても良いんじゃないか?」
「ギルドとしては、内密に事を運びたい。だから君に依頼しているのだよ」
なるほど。
長い間、登録してるにも関わらずギルド内で特に目立った活躍もしてない俺に白羽の矢が立ったか。
「俺が死ぬって考えはないのか?」
「その時は、ギルドは無関知だ」
何気にひでぇな・・・
「遺跡探索のついでに探しといてやるよ」
そう言って、俺は執務室を出た。
ったく、やっぱり面倒事じゃねぇか・・・。