真実
いつも、これを告げるのがキツい。
「あなたは、死んでしまったんですよ」
だが、それが私の職務であるならば、それを告げずにはいられない。
肉体を離れた魂を案内する、死神としての私の仕事だ。
もっとも、最近は配下の者たちが代わりにしてくれているおかげで、私は趣味に没頭できる。
そのための秘書も雇った。
死んで間もない彼女も本が好きで、その書庫係兼私の秘書をしてもらっている、いい娘さんだ。
私の身の回りの世話よりも、書庫の管理をしてもらっている方の時間が多い。
「あ、お帰りなさい」
「ただいま」
他にも人がいるが、こうやって挨拶を返してくれるのは、彼女一人だけだ。
「どうでしたか」
「ええ、やはり疲れるものですね」
椅子に座った私に、氷水が入ったガラスのコップを差し出してくれる。
「ああ、ありがとう」
水を飲み、すこし休んでいると、彼女が何かの本をもっていた。
「それは、何の本ですか」
「ああ、あの書庫の中にあったんで、面白そうだったので、ちょっと借りたんです」
ダメでしたかと、小声になって聞いていたので、私は笑って彼女に伝えた。
「この家の外に持ち出さない限りは、大丈夫ですよ。自由にしてください」
私は彼女に言った。
それを聞いて、とても喜んでいるのが目に見えて分かる彼女が、私の目の前に立っていた。
「ありがとうございますっ」
そう言うと、彼女は自室へと戻った。
「…まあ、いいか」
私は、彼女の喜びようを見て、それからは何も言わないようにした。