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◆彼は不器用な人です

 


 風邪が治った。

 学校に行かなくては……。


 鞄を学校に置いてきたから小説の執筆する気も余り起きずに、だらだらと3日間過ごしていた。

 その間もずっと佐伯の事を考えていた。

 寝る時も、読書してる時も。コーラを飲むときは特に……。

 冷蔵庫を開けてコーラを手に取ると、


『オラ、買ってこいよ、コーラ。』


 と言う声が頭の中で響き渡る。

 そうすると、“逢いたい”と言う気持ちが一段と強くなる。


「佐伯なんて……っ」


 どーせあの告白も嘘だったんだから!私が謝る義理はない……と思うのに。

 でも、やっぱり少しは本気だった?と自惚れてしまう。

 もし、そうじゃなくても人の話をまともに聞かずに帰っちゃった私も問題だよね。


 だからやっぱり―――謝りたい。


「謝ろう……今日こそは」


 制服をぱっぱと着て、誰もいない部屋に、


「いってきまーすっ!」


 と一声。

 鞄を持たずに歩いているなんて恥ずかしいけど、なんとか学校に着いた。

 職員室に行って、鞄を受け取らなきゃ。

 そうして山田先生の所に行くと帰ってきた答えは。


「あ?それならさっき佐伯が持ってったゾ?」

「どっ何処にですか?」

「聞いてなかったのか?確か……“琴吹さんの聖地に、ですよ。先生”とかなんとかいって…」


 がくり。


「やけに険しい顔してたな……喧嘩か?」


 ?

 険しい顔?

 なんでだろう?そう言えばなんで私の鞄を持って行った。 


 もしかして…もしかして…!


「はいっ!仲直りに行ってきます!」


 佐伯なりに悪かったと思ってる?


「そうか…頑張れよ!」


 その言葉に元気よく頷いて走り出す。

 後ろで「廊下を走るな―!」と熊男又の名を山田先生が叫んでいるけど……。

 ごめん。先生!今だけは! 


 


 * * *

 

 ―――バンっ!


「きゃ!?」

「!」


 勢いよく開いた扉のすぐ近くに佐伯がいたもんだから、つい叫んでしまった。

 佐伯も驚いている。


「鞄っ返して!」


 何故第一声がそれなのか?

 私はこんなことを言うために運動不足の体を動かしたわけじゃないのに!

 

 ―――謝りたいのにっ!


 口から出てくるのはそれとは裏腹に彼を責める言葉ばかり。


「どうせゲームなんでしょ!?だったら今更何なのよ!これ以上私に構わないでっ」


 嫌だ。嫌だ。

 違うっ!ただ謝りたいだけ!


「わたっ……!」


 目を強く瞑って佐伯の姿を見ないようにして叫んでいたら、ふわりと温かい感触。

 

 ―――え?


「ごめん、許して…っ」


 抱きしめられてる?

 それも嬉しかったけど……佐伯の声が余りにもか細くて、弱くて…いつものとのギャップについ、


「こっちこそ、ご、ごめんっ」


 と、謝ってしまったのが私の敗因だった。

 抱きつかれながらの会話。  

 背が高い佐伯は猫背になって私を抱きしめてくれる。 

 

「俺、お前なら…受け入れてくれるって勝手にそう思ってた…」

「ううんっ!私、佐伯といられて結構おもしろかった!」 

「そっ、か…」

「でも、からかうのは酷いよー、佐伯一応かっこいいんだからさー、いくら冗談でも“あれ?もしかして?”って自惚れちゃうよ―」

「………え?」

「え?アレ、冗談でしょ…?クラスの人にも言ってたじゃん、“何日で僕に堕ちるか”って…」


 自分で言ってて哀しくなってきた。 


「あっあれは……!」

「大丈夫!もう乗り切った!」

「だからっちが……」

「もうーしつこいなぁ~だから大丈夫だって!」

「お前は人の話を聞けぇっ!」


 抱きしめられながら耳元で怒鳴られた。 

 怖すぎるし、痛い。(おもに耳が)


「さ、佐伯っいたっ……」

「いいかっ!?普通好きでもない奴を抱きしめるか!?慰めるか!?毎日いたりするか!?」


 うぅ。怖いよぉ~。


「で、でもっクラスの人には……」

「アレは俺がお前のこと好きって言ったら豊島達にお前嫌がらせされるに決まってる!だから…」

「えぇ!じゃあアレは嘘?」

「そうだよ!バーカ!」


 な、なんだとぉ~。


「私がどれだけっ!どれだけ傷ついたことかっ!この無神経野郎!」

「な、なんだと~!こっちが穏便に済ませようと謝ってやったのに!大体お前が人話きかずに帰るからだろうが!」

「うっ…まぁそれはごめんなさい……」


 痛いところを突かれて私は負けた。


……無念なり。





「でも私なんかの何処がいいの?」

「!?そ、それは……っ」


 2人の気持ちが落ち着いてきたところで、桜華は涼に聞いた。

 

「なに?もったいぶらないでよ……」

「お前~それわざとなのか?そうなのか……?」

「?」

「もったいぶってるんじゃなくて…照れてるんだっ!そのぐらい察しろ鈍感女!」

「あーはいはい……プッ」


 桜華もだんだん涼の扱い方が分かってきたのか、適当に受け流している。


「笑うな―!」


 (なんでだろ?優等生キャラの佐伯 涼は、もっと大人びて見えるのに。俺様キャラの佐伯 涼は、子供っぽい。)


「なんか……今俺に対して失礼なこと考えてないか?」

「っ!いえいえ滅相もございません!」  


  妙にカンがいいのはなぜ!?


「でも逢いたかったなぁ――…ね、逢えてうれしいっ」

「……お前、誘ってんのか?」

「ほぇ?」

「ま。気長に待つか…」

「?」

 

 なんのことやら。

 

「でもっ…俺らは今日から恋人って事はわすれんな!」


 ――え?えええええ!?



余談。(台詞のみ)


涼「ところで桜華」

桜華「何?」

涼 「子供は何歳ごろ産む予定だ?」

桜華「な、ななな……っ!」

涼 「早い方がいいと思わないか?」

桜華「こんのっ糞エロ爺ィ!!」


涼は全治三ヵ月のけがを負いました。

女の子は恐ろしいのです……(^u^)


これで、本編は終了です(多分……終わりだよな?

でも、気が向いたら【番外編】とか書くかもです。

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