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ガトリング娘の香取さん

作者: КатюшА
掲載日:2026/04/07

初投稿です。拙い文章で申し訳ないですが、どうか温かい目で見ていただけたら幸いです。

ミリタリーをよく知らない人にもわかりやすい文を書けたらなと思っています。

もともと連載を予定して書いていたので、空のパートが長いのはどうかご容赦を…!

ピー…ザザッ…


掠れた無線のノイズ音が清冷な空を切る。


《ワルキューレ1より、ワルキューレ2へ…寂しすぎる最後の飛行だな。》


突然の無線に少し驚きつつも、無線機の前で少し息を整え、答える。


《ええ、そうですね。とうとうこの隊とはお別れ。最後の哨戒も楽しかったですよ!》



航空自衛隊小松基地第6航空団飛行群第307 F-15J飛行隊…通称"ワルキューレ"隊。彼女の部隊。

今日はその長くとも短いパイロット人生のラストデイだった。先日起きたとある"事件"のこともあり、統合作戦司令部は躍起になって周辺空域の哨戒を指示している。


…もっとも、その事件が彼女が退職する理由であるのだが。



日本海での任務を終え、基地へ帰還する至って普通の火曜の昼下がり。



《ワルキューレ3より、"HEROINE"へ。正式に退職したら記念に飲み明かさないか?》


陽気な声がコックピットへ広がる。だが、同時にその名前を聞いて少しむっとした。


《ちょっと、ワルキューレ3!そのTACネームは嫌いだっていってるでしょ!》


《おいおい!最後までせっかく隊長がつけてくれた名前を嫌い嫌い言うのか?ハハッ!だってよ、隊長さん!》


《………ワルキューレ3、私語を慎め。》


3番機の彼の軽口に、隊長機の少し悲しみを込めた返答が送り返された。


《ちぇっ、自分だって…》


《何か言ったか?》


《ノー、サー!小官は隊長殿に"自分だって私語をしているのではないか"、などという文句は言っていないのであります!》


《はぁ…困ったやつだ…》


彼らが相変わらず口喧嘩をしている時、活気のある若い声が無線に割り込んだ。


《ワルキューレ2!こちら、ワルキューレ4!今までの任務、お疲れ様でした!》


《ええ!ありがとう、ワルキューレ4。帰ったらワルキューレ3の言う通り、隊のみんなで飲み明かしましょう!》


《お!そうでなくちゃな!やっぱり2番機さんと4番機さん達は乗り気ですぜ?隊長さん?》


《ワルキューレ3!私語を慎めと何度言わせる!》


《だから!何で俺ばっかりなんだよ!!》


相変わらずな隊員たちの調子にくすくすと笑いが溢れる。


雲が手を振り、陽光がキャノピーを通してショーケースの中のケーキのように彼女を輝かせている。


なんだか最後の飛行にしては気分がいい。




その時だった。


《うわっ!ちょっと…!》


エンジンから異音が響き、突然推力が急変した。警告灯が点滅し、燃料系統の異常を示すアラームが鳴り始める。


《こちらワルキューレ1。ワルキューレ2、状況報告せよ。》


《エンジンに異常発生!燃料漏れの警告が出ていて、速度も不安定です!》


初めて経験する深刻な故障に戸惑いを隠せない。

しかし、流石のF-15Jも今や老齢の軍馬。

そろそろガタが来ているとはよく聞く話だが、まさか自分のラストフライトでこんなことが起きるとは。


《何?はぁ…後で整備員に文句を言っておけ。よし、燃料残量確認。バックアップシステムに切り替えろ。すぐにフォローする。》


隊長の指示通り、燃料系統のスイッチを操作するが、応答がない。


《隊長!切り替え不能!燃料が急速に減少しています!》


《クソ…燃料は基地まで持つか?》


《え…と、大丈夫です!まだかなり余裕があります!》


燃料漏れは急速に燃料を消費するため、基地までの距離が問題になる。が、さほど基地から離れているわけでもないため、まだかなり余裕があった。


《こちらワルキューレ3、とんだラストフライトだな!ははっ!》


こんな時にも関わらず彼は永遠にお調子者だ。流石に怒りが募る。


《うっさい!笑ってる余裕あんなら代わりにあんたが乗る!?》


《…すまん…》


稀に見る気迫に、流石の彼も尻込みしてしまった。


視界が開け、遠くに街が見えた。


《よし…基地が近づいてきた。ワルキューレ2、旋回して燃料を消費せよ。エンジン出力調整を行え。》


《了解っ……うぇっ!?》


操縦桿の反応が鈍くなり、油圧系統の警告も追加された。機体が不安定になり、空間識失調の兆しを感じる。


《う…操縦が効きにくくなってきました!油圧異常!?》


《マジかよ…》


流石の3番機も状況を理解し始めた。


ヨーイング(水平に機首を動かす事)はできるのか!?》


《かろうじて…でも不安定すぎてまともに出来ない!》


《…ああっ…!このクソッタレの鉄クズめ!最後ぐらい騎手に花持たせてやれよバカ!》


彼が叫び、両手と額に大量の汗が滲む。



そうこうしているうちに街の上空まで来てしまった。


《小松基地管制塔へ、こちら、ワルキューレ1、聞こえるか?》


隊長が管制塔へ連絡を入れた。きっと彼らなら…何か…何か解決策を示してくれるはず!


《こちら、小松基地管制塔。ワルキューレ1、どうかしたか?》


《非常事態を宣言する。ワルキューレ2の燃料系統異常と油圧トラブルで操縦困難。指示を乞う。》


若干の間があったあと、管制官は静かに答えた。


《了解、ワルキューレ1。ワルキューレ2、本土を縦断できるほどの燃料はあるか?》


本土の先は、もちろん海。

つまり…もしこのまま操縦不能であれば、機体を捨てて太平洋上で脱出しろ、と言うことだ。



ある二次大戦のエースの言葉を思い出す。


「五体満足で着陸できたら良い着陸。同じ機体が使えるなら最高の着陸だ。」


つまり、機体が再起不能でも、搭乗員が無事なら大きな損失ではないということ。

事実、先の大戦での優秀なパイロットを失った旧海軍航空隊はなんと弱かったことか。


しかし…彼女にとっての機体は"友達"だった。

そんな友を捨てろなどと言われても、すぐにできるはずもない。


迷いが迷いを呼び、思考を鈍化させる。




《ワルキューレ2!大丈夫です!俺たちがついています!どうか気をしっかり!!》


……そうだ!私は生きなければならない。隊のみんなのために。退職記念に飲み明かすために。


例えとても些細な目標でも、今はそれでいい。



(ごめんね、私のお友達…)


機を捨てる覚悟ができた。


《了解!かなりギリギリですが、持ちま…いえ、持たせます!》


《了解。そのまま直進し、洋上で脱出せよ。》


コックピットの中を、一つずつ撫でる。

幾度と見たその機械たち。

懐かしさと哀愁を孕んだ、その機体。

ただ一つキルマーク(・・・・・・・・・)のついた(・・・・)、その機体。


計器を一つずつ撫でている時、異変を感じた。


「……っ!」


高度が落ちている。燃料漏れの影響でエンジン出力が不安定になり、機体が徐々に下降し始めた。


1フィート、また1フィートと高度計から数字が引かれてゆき、高度が低いことを示す『ALT』の文字が輝く。



《たっ、隊長!高度が…高度が落ちていきます!》


《何!?クソッ!太平洋まで持つか!?》


《このままだと…山に激突します!》


《なんてことだ!どこまでしつこいんだこの飛行機野郎め!最悪の場合、市街地でのベイルアウト(脱出)も覚悟しろ…ワルキューレ2…!》


普段暴言など吐かない隊長が焦っているのがわかった。


《そんな…でもそれじゃ!》


民間人に被害が出ること。これだけは、何が何でも避けたい。そんなことが起きてしまえば自衛隊全体の沽券に関わる。何より、自分が許せなかった。


《密集地を避け、郊外で脱出しろ!わかったな!?》


《………はい!》




山が近づいている。高度はいつのまにか1000mを切っていた。


《ワルキューレ2…無理そう…だな。》


《そう…ですね…》


《ベイルアウトの準備をしろ………幸運を祈る。》



とうとうその時がやってきた。機体を捨て、周りに被害を出さずに生き残る。

この辺りはまだ人が多い。もう少し、もう少しだ。




《…今だ!!ベイルアウトしろ!!!》


《はい!!!》


座席の下のレバーを思いっきり引いた。キャノピーが吹き飛び、座席がロケットの様に打ち上げ…………






《ああっ!!飛ばない!!飛ばないよっ!!クソッ!悪魔め!!!》


《何だと!?》

《そんなっ!!》

《ああああああっ!!クソが!!》


隊員たちの絶叫が無線を交差する。


《電気系統がイカれて…キャノピーが飛びません!!》


計器の各地から大量のアラーム音が鳴り響き、涙を溜めた目が泳ぐ。


耳に響くのは『Pull Up!(引き上げろ!)Pull Up!(引き上げろ!)』の音声。


沸騰した涙が目元から溢れ出る。

死にたくない。まだ、両親に会いたくない。


(嫌だ…死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくな)





《ワルキューレ2!!前!!》


その瞬間、時が止まった。

目と鼻の先に、木々が生い茂る森がある。そこの木が針葉樹か、広葉樹かの判別さえつく。



《ああああああああああああああああ!!!!》



直後、時間が動き出し、爆炎が視界に広がり、紙のように体が吹き飛んだ。

搭載ミサイルが爆散し、機関砲が投げ出された後、そこに細切れの"彼女"が降り注ぐ。

黒煙が空へ拡散し、薙ぎ倒すような炎が山の表面を炙った。


《ワルキューレ2!!おい!応答しろ!ワルキューレ2!!!》


《ああっ……そんなっ……こんなことって……うぐっ……》


《クソがぁっ!!なんでだよ!!なんであいつがっ………うわあああああっ!!》


彼らの慟哭は、決して届くことはなかった。






_____________________







「疲れた〜〜〜っ……」


今日も残業を終え、終電で帰宅。


俺の名前は沖田。

それなりの大学を出て、それなりの企業に適当に入社して上司の仕事を押し付けられながらいやいや残業させられる毎日を送っている、いわゆる社畜。

人並みに夢を持っていた時期もあったものの、それは今や叶う見込みのない愚物と化していた。



「はぁ………つまんね…何を間違えたんだろ……」


自然と愚痴がこぼれ落ちる。


だが、俺の気持ちなど露知らず明日も強行軍が待っているのだ。

社会への不満より、とにかくまずは寝たかった。

ドアに鍵を差し込み、時計回りに回す。

……が、反応がない。

差し込んだ鍵はただ空回りするだけで、あの軽快な解除音を響かせてくれはしなかった。


(閉め忘れ…か…)

近頃は繁忙期で特に忙しく、このような不注意は多々あった。


どのみち盗まれるような物もないと、さほど気にせずにドアノブを回した。


部屋の中は薄暗く、かろうじて部屋に散らかったシャツが見える。


(電気……)


手探りでスイッチを探し、パチッというスイッチの音と共に、部屋の全容が露わになる。


「……え…」


疲労で霞む目でもはっきりと見えた。


黒く光る6連装の銃身、弾帯の中には悍ましいほどの大きさの銃弾がギチギチに詰まっている。


その姿には見覚えがあった。

航空自衛隊の基地に展示されていたのを見たことがある。


"M61バルカン"


アメリカのゼネラル・エレクトリック社が開発した航空機関砲であり、20mmの弾丸を毎分6000発撃てるというバケモノ兵器だ。


だが、さらに意味がわからないのが、それの隣にいるボロボロの服を着て土下座している女性だった。


「ちょ…ちょっと……」


俺は思わず声を上げた。強盗か?いや、そんな大掛かりなモノを持って強盗するやつなんているはずがない。


「す゛み゛ま゛せ゛ん゛て゛し゛た゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」


言いかけたのをその女性が遮る。


「あ゛の゛っ゛!!!き゛ゅ゛う゛て゛わ゛る゛い゛ん゛て゛す゛け゛と゛し゛は゛ら゛く゛こ゛こ゛に゛お゛い゛て゛く゛れ゛ま゛せ゛ん゛か゛ぁ゛ぁ゛!!??」


顔をぐりんと上げて、叫び声とも涙声ともとれる声を発してながら彼女は懇願した。


(ああ…俺、夢を見てるのか…)


試しに頬をつねってみるが、ただ痛いだけで夢からは醒めない。

つまり、この古典的な方法によってこれが現実であることが証明されたわけである。


とりあえず彼女に話しかけてみる。


「えー…と…大丈夫ですか…?」


怯える猫を扱うように体を低くし、目線を合わせて優しく言う。


何が大丈夫なのか自分でもわからないのだが。


「た゛い ゛し゛ょ゛う゛ふ゛し゛ゃ゛な゛い゛て゛す゛う゛ぅ゛ぅ゛!!!と゛う゛か゛け゛い゛さ゛つ゛に゛は゛い゛わ゛な゛い゛て゛え゛ぇ゛!!!!」


涙と鼻水が大洪水を起こし、床にぼたぼたと大粒の水分を落としている。


「わかったわかった…警察には言いませんから…とにかく落ち着いて、ね?」


必死なのはわかったが、とにかくうるさい。近所迷惑でこれ以上厄介ごとを増やされても敵わないのだ。


「ゔっ……ぶぁい……」


彼女は少し声を抑えて、ゆっくり立ち上がる。ボロボロの服から土埃が落ちる。ガトリング砲は彼女の横に置かれたまま、威圧感を放ち続けていた。



---



「ずぞぞぞぞぉぉ〜〜っ」


……とりあえずお茶と煎餅を出してみたのだが…物凄い勢いで食べている。

特に喉が渇いているのか、お茶はもう既に4、5杯は飲んでいた。


「あの、お名前は……」


コミュニュケーションの基本は名前からだ、と何かの本で読んだことがある。

とりあえず横の物騒なものは置いておこう。


「ぁう…香取かとり 波瑠夏ばるかですぅ……」


「あ…そうなんですね……」


「はぃ…」


「…」


「…」


……気まずい…俺は生まれてこの方女の子とプライベートな話をしたのは母親と妹くらいというカス人生のため、どう話を続けたらいいのかわからないのだ!


「あぁ…えーと、俺は沖田っていいます。ところで、その横の物は……?」


仕方がない。なるべく触れたくはなかったが、今は話の糸口を見つけるしかない。


「ん…ああ、これはガトリング砲ですね…」


「はあ…」


「…」


「…」


ダメだ…!まるで話が広がらない…!俺か!?俺が悪いのか!?ああそうですとも!俺のコミュ力のせいですとも!!


「何で…あるんですか…?」


こうなったら無理矢理広げるしかない…!


「ちょっと色々あって……」


目を逸らし、お茶をおちょぼ口でちびちびと啜っている。



「あ」


突如思い出したかのように顔を上げると、彼女の顔色が途端に悪くなり小刻みに震え出した。


両手人差し指の先をつんつんさせながら話し始める。


「あのぅ…そのぉ…ここ…入ってくる時にぃ…ドアをちょっと…そのぉ…」


嫌な予感がして振り向くと、さっき自分が入ってきたドアが大きく歪み、少しだけ開いた所から夜の帳が顔を覗かせていた。


ぽかんと口が開いたまま、ゆっくりと彼女に向き直る。


…また土下座している。


「すっ…ずみまっ…す゛み゛ま゛っ゛……!!」


「あぁぁあぁあ!ちょっとストップ!泣かないで泣かないでえぇ!」






「ずぞぞぞぞぉぉ〜〜っ」


「はぁ…」


とんだ厄介者が来てしまったと今更ながら思う。

なんで残業終わりでこんな目に遭わなくちゃいけないのか。さっさと寝たいんだよこっちは。


「…で、そのガトリング砲でドアをぶん殴ってこじ開けたと…。」


「はい………」


いや特殊部隊か。だが残念ながらうちは訓練施設や犯罪拠点はやってない。


道理で鍵を開ける音が鳴らないわけだ。

だって壊れてるもん。


「なんで…うちなんですか…?」


「いやー…あの…ここ来る直前にですねぇ…その…警官にバッタリ会っちゃいましてぇ…」


「そりゃ驚きますよねぇ…なんせボロボロの服着てる若い女の子が呆然と立ってて、レ◯プでもされたのかと思って声をかけたらこんなもの持ってるんですもん。」


彼女はクイッと"こんなもの"を持ち上げた。



「でも…いきなり拳銃ぶっ放してくるとは思わないじゃないですか!!」


「…」


確かに思わないが、不思議とその警官の気持ちもわかる気がした。


「それで逃げたら追いかけて来るんですから、急いで隠れる場所見つけようとして…」


「うちのマンションに来たと…」


「でも敷地の中まで追いかけて来たもんで、どこかの部屋に入ろうとしたんですよ!」


「でも…なんだってこの部屋に?」


それほど大きなマンションでもなく、空き部屋もそれなりにあるが、なぜ俺の部屋なのか。


でも、答えは思ったより単純だった。


「あー…っ…郵便物が大量に溜まってる部屋なら…確実に空いてるかなって!」


「………」

理屈はわかるのだが、苦笑とはいえその顔で言われると流石に腹が立つ。


まあ郵便物なんかに気を配ってる余裕なんて無かったのも事実なのだが…


「まあ………管理人には上手く言っておきますよ…ところで、えー、と…香取さん?」


「はい?」


「ここにいたいですか?」


その言葉を聞くなり、彼女は顔に笑みを残したまま、顔を下げる。

「…はい…でもお望みならすぐにでも出て行って……」


「しばらく居てもいいですよ?」


「あぇ?」


今度は完全に意表を突かれたような間抜けな顔になった。


「その様子だと、行くアテないんですよね?」

「色々迷惑でしたけど、関わってしまった以上見過ごせないというかなんていうか…」


「本当ですか!?いいい、今しばらく居てもいいって言いましたよね!?あーもう言質とりましたからね!!?今更変更できませんよ!!!」


机のお茶と煎餅をひっくり返しそうな勢いで叫んだ。

むしろこっちが気圧されている。


「まあ…いいですよ…ちょっと落ち着いて、ね?」


苦笑いして彼女を宥める。

ただ目にハイライトが戻ったというか、きっらきらのエフェクトがついたというか、多分これが彼女の素なんだと思う。




「でも、私が仮に190cm100kgの筋肉モリモリのマッチョマンだったら、多分OKしてないですよね?」


「うわっ!急に落ち着かないでくださいよ!!」 


ストンと冷徹に蔑むような目でこちらを見つめる。

よく見たら背筋も伸びている。


「そんな下賤な下心なんてないですよ!はぁ…居たいんですか?居たくないんですか?」


さっきとは裏腹に今度は物腰柔らかく微笑んで、彼女は言った。

「…では、お言葉に甘えて……」


ふふふと笑みを浮かべるその姿は、さながら天使のようだった。

こっちもなんだかこそばゆい。



「ごほん…まず最初に、私はお腹が空きました。何か作ってください。」



やっぱり悪魔かもしれない。


「あの…失礼なんですけど、あなた居候ですよね?」


「ちょっとふざけただけですよ!もう、真に受けすぎです!」


けらけら笑う彼女は、俺にはどうしても憎めなかった。









10分ほどして、作ってやったお茶漬けをぺろりと平らげた彼女なのだが、どうにもさっきから落ち着かない様子だ。


(余程嬉しかったのかな?)


ならばこちらとしても喜ばしい限りだが、どうもそれとは違いそうだ。




「あーーっ!!もう限界っ!!すみません!ここって屋上ありますか!?」


「お、屋上!?」


突然の言葉に驚いた。居候→屋上の有無の話に繋がるのはどうも辻褄が合わない。


「ありますけど…」


「ちょっと案内してくださいっ!!」


「は、はい」


逆に引っ張られるように外に出て、階段を駆け上がる。


扉を開けると、ちょうど月が真上から少し傾いたくらいの位置にあり、星々が煌々と輝いていた。


「海は……あっちか!」


そういうと彼女は海のある方角を向いた。

両手に持つガトリング砲と共に…

まさか……


「耳、塞いでぇぇぇっ!!」


「おい!よせやめろ!」という俺の必死の悲鳴は、直後の業火と、硝煙と、轟音の前に消え去った。


どんなに耳を強く塞いでも、耳と掌の間をすり抜けて爆発音と衝撃波が鼓膜を突破してくる。


がらごろがらごろと大量の薬莢が屋上へと広がる。

なんせ1秒に100個だ。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


と彼女が叫んでいるのが爆炎に照らされてわかる。

無論聞こえはしないが。


10秒ほど発射して、彼女は射撃をやめた。


「ふうっ!スッキリしたぁ〜〜!!」


眩しい笑顔を携え、薬莢を蹴飛ばしながら彼女はこちらへやってくる。


「沖田さん、大丈夫そ?」


恐怖に慄いて腰が抜けた俺を彼女は見下ろして言う。


「今日から、お世話になりますね♡」


硝煙混じりの月明かりに照らされる彼女の顔は、それは眩しいものだった。

感想、レビューなどもお待ちしています。

それでは ノシ

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― 新着の感想 ―
Xから来ました!自分はこう言った設定で書くのが苦手なのですごく勉強になります!どうなっていくか気になります…!
空のパートがとても詳細に描かれていて、ミリタリー分野に疎い私でさえも映像が浮かんでくるようで、とても迫力がありました! そして、馬鹿真面目で大胆な香取さん…一体何者なのか?タイムスリップ?それとも? …
親方ああああああああ 空からF15女子があああああああ(感涙
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