第7話 死に至る毒
~ジェラルド~
「どうした!?」
弾かれたようにレオンとザック、それに『学者』と俺の幹部四人は隣室に駆け込んだ。
この突貫で建てた木造の巨大な平屋には、俺達幹部の寝室や会議室の他に、怪我人や病人の治療をする臨時の救護室がある。
木の板の上に厚手の布を敷いただけの固い寝床だが、怪我人や病人が二十人以上は同時に横になれるだけの広さがある。
その一角に若い女が寝かされていて、父親と幼い娘が女の手を握っていた。
「おじさんっ、お母さんがっ」
幼女が泣きながら助けを乞う。
見れば母親は青ざめた顔で苦しそうに喘いでいる。
額には玉のような汗が浮かんでいた。
「大丈夫だ、リコ。……何があった?」
泣きじゃくる幼女の頭を撫で、狼狽える父親にレオンは落ち着いた声で尋ねた。
「わ、分かりません!女房が今しがた突然倒れて……ど、どうすれば……!俺はどうすれば……!」
だが父親は気が動転していて、いろいろ聞いてもイマイチ状況がつかめない。
「喋れるか?どうしたんだ」
取り乱す父親をレオンが落ち着かせている間に、俺は母親の方に声を掛ける。
「……昼間、森に木の実を採りに行ったときに……紫色の……ウサギのような動物に足を噛まれて……」
母親は途切れ途切れに話す。
「ウサギ?……ちっ、魔物か!?」
ザックが顔を顰める。
俺は「傷をみるぞ!」と言うが早いか、女の長いスカートを膝までまくった。
「……!」
「ひっ!」
その傷口を見て一同は思わず息を飲む。
父親は短く悲鳴を漏らした。
女の右足、脛の部分に噛み痕と思しき二つの傷があった。
その患部を中心に脚が紫色に腫れ上がっている。
膝下だけではなく、腿まで、左脚の倍近くまで膨らんでいた。
しかも改めてよく見ると、首筋や腕、手首などに紫色の斑点が浮かんでいるし、血管が異様に浮き出ている。
おそらくこの斑点は全身にありそうだ。
「毒……!」
すぐさま『学者』は母親の傍らに膝を突くと、患部にそっと手を当てて呪文を詠唱し始めた。
淡い光が『学者』の全身を包み込み、やがてその光は彼の右手を伝って女の傷口を包んだ。
「『学者』、治せるか!?」
父親と幼い娘を含めたその場の全員の視線が『学者』に注がれる。
「ダメです……解毒魔法が効かない。これは見たことのないタイプの毒だ」
だが、しばらくして『学者』は申し訳なさそうに首を振った。
「……症状を和らげたり、毒の回りを遅らせるのが精々です」
「くそっ、毒消しを持って来い!」
レオンが振り返って叫ぶ。
「わ、分かった!」
ザックが慌てて薬を取りに駆け出した。
「ちっ、大して回復薬なんて残ってねーぞ……」
俺は思わずそう呟いていた。




