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小野小町

五月なのにもう真夏日だった。


「ズバリ!それは根の国でしょう!」突然の大きな声。そこにアイツが立っていた。


柳棚国男。こいつはフルネームで呼ばないとうるさいのだが。なんでも伝統ある柳棚書店の当主とかになるという。本人はそう柳田国男と関係がある家系だというのだがどうだか。だって名字が違っているじゃないか。それに私(作者)もよく利用する本屋なんだけどあのオヤジは嫌らしい視線で私を見るんだから、知性の欠片もない。


「なんでアンタここにいるのよ」


イモたち、心配はいりません。不審者は警察が連れてってくれるでしょう!」


「芋ってアンタ失礼ね」


「ズバリ!イモは妹で愛しい人とかそんな意味でしょう!」


また面倒臭い奴が出てきてしまった。こいつは「ちびまる子ちゃん」に影響されて自分がクラスで一番偉いと思っているから、それ以来、「ズバリ!癖」が治らない。こいつがいるから小野まちこは女子校に入学したのだ。それで私まちこに会えなくたった。柳棚国男はめんどくさい奴なのだ。でなければまちこは男女共学の憧れの私のいる高校生になっていたのに。


「柳棚国男じゃなく、柳田国男の“根の国”からやってきたということ?」と小野まちこがいう。頭がクラクラしそうだった。


そして在原業平だという爺さんも、へたり込んでいた。


「ちはやぶる神代も聞かず竜田川唐紅に水くくるとは」


「お爺ちゃん、熱中症になったんだわ。神さまに祈っている。あんた水を出しなさい」葛原けいこが柳棚国男にそう指図した。この女は何かとリードしたがる。


「ズバリ!それは間接キッスになるでしょう!」


「あんた、ホモなの?違うでしょうが。私の水を上げると間接キスになるかもしれないけど、アンタは男同士だから友情ってやつよ」葛原けいこの論理もわからないけど、柳棚国男はそれで納得したようでペットボトルを業平爺に渡した。


「だめだよ、水なんかあげちゃ!あんたたち責任持てるの。そういうときは救急車でしょ?」と小野まちこは言った。


 そして誰かが救急車より先に警察を呼んだようだ。遠くからサイレンの音が近づいてくる。


「君たち通報があった不審者とはその男かね」背の高い方の警官が言う。デブの警官はケータイで話していてこっちを見ようともしない。


「不審者じゃなく私の親戚なんで」と小野まちこは機転をきかせて言って言う。彼女はなんても抱えるこんでしまうタイプだった。


「どう見ても不審者じゃないか?」とデブ。


「いえ、ホームにお世話になっているんです」とまちこ。


「じゃあ、大丈夫なの?」とノッポ。


「ええ、お爺ちゃんが歩けるようになったら連れていきます」


「せっかく警察が来てくれたんだから、任せようよ」とけいこ。


「送ってくれますか?」と今度は柳棚国男が無責任なことを言う。なんだかんだでパトカーに乗ることになったのは、小野まちこ、ケ葛原けいこ、在原業平で柳棚国男はこれ以上関わりたくないので置いていくことにした。


「うつつにはさもこそあらめ夢にさへ人目をよくと見るがわびしさ」


パトカーに乗ると小野まちこの中の小野小町が小さくつぶやいた。それに答えたのはやはり在原業平だった。


「かきくらす心の闇に惑ひにき夢現とは世人さだめよ」

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