ドン引きシャーロット
横丁に、いた。
確かに居た。そこには杏菜、才口杏菜ちゃんが居た。
「杏菜ちゃん、ここに居たの?」
「あ、あんな?多分人違いです」
「私の名は、シャーロット・アーベントロート。あなたは?」
杏菜ちゃんは私にそういった。
しゃ、シャーロット?どうしたの?中二病?
「杏菜ちゃんじゃないの?」
彼女は怪訝そうな目で、うんと言った。
その、アライグマ姿の杏菜…、自称シャーロットは
「では」と言い、立ち去った。
私は追いかけた。
横丁の前の坂を下ると、杏菜はぶつぶつ言いながら小走りで歩いていた。
「ヤバい人にあった ヤバい人にあった ヤバい人にあった ヤバい人にあった ヤバい人にあったヤバい人にあった ヤバい人にあ…」
そんな事を言っていたと思う。
*
「ねえ!」私は思わず声をかけた。
「な、何ですか?す、ストーカー?警察に通報しますよ」
「杏奈ちゃんじゃないにしても、シャーロットさん?あなたの顔を見たことあるの」
「ど、どこでですか?」「高校。夕詩ヶ丘高校の2年5組の!」
「ゆうしがおか…?そんな高校はないですよ。とにかく・・!け、警察に通報しますよ!」
シャーロットは(杏菜と信じるのはやめにしよう)勢いよく走っていった。
私はシャーロットを尾けてみることにした。
シャーロットは丘を降り、川の近くの家の中に入った。
裏手に回ってみると、そこは駄菓子屋だった。表札には英字(違うかもしれないけど)で
「Abendrot」と書いてあった。
その後、表に回り、インターフォンを鳴らしてみた。ピーンポーン。
はーい、とシャーロットの声が聞こえた。この声も杏菜まんまだ。
シャーロットは私を見るなり臨戦態勢のように、玄関においてあったイノシシの置物を持って
かまえた。「だ、誰ですか、さっきから!」「私は永山光莉と言います。あなたによく似た顔の人の
友人です」
シャーロットは私を見て「は?」という顔をした。
「私は異世界から来ました。」
こんなこと言ったら、バック・トゥ・ザ・フューチャー3みたいに、なにか言われるんじゃないかって
心配した。信じてもらえるかな?
「何言ってるんですか?!頭おかしいんじゃないの?」そう言って彼女は扉を勢いよくしめた。
奥から母親らしき女性の声が聞こえた。「シャーロット、大丈夫なの?」「う、うん。大丈夫!」
やけに取り繕ったみたいな声。あの声の感じも、杏菜そのまんまだ。
さ、今日は寝床を探すか。