なにげ大胆発言
お腹もいっぱい。満足!
割り箸を置いて手を合わせた。
「おいしかった。ごちそうさまでした!」
河原崎はとっくに食べ終わってる。
「うん、俺の蕎麦も美味かった。デザートはいいの? ほら、ここにデザートメニューがいろいろ載ってる。和風パフェだって、どう?」
デザートね・・・
私に向けてメニュー表を差し出す河原崎。
あなたは女の子にさり気ない気遣いがサラッと出来るのね。
今まで何人の子にその言葉を?
これまでどんな女の子たちと付き合って来たの?
なぜだか妬けてしまう。これまで河原崎に優しくされたであろう、私の見知らぬ女の子たちに。
メニューから目を上げたら不意に河原崎と目が合った。そのまま顔を見てたら別の可能性を発見した。
そっか! これは女の子慣れじゃなくって、これは過去の彼女の影ではなくって、もしかして単に自分が食べたいからだけかも!
私に見つめられて、河原崎は不思議顔。
「どうし・・・(´・ω・`)? あ! もしかデザート、そんなに迷ってんの? クックック・・・河合は細いから2つ3つ食べても大丈夫じゃん。俺に遠慮しないで好きなもの頼めよ」
なーんか変な勘違いしてる。
「もうお腹いっぱいだからいい。河原崎は?」
河原崎にメニューを向けた。
「ううん、俺は甘いものはあんま好きじゃないからパス」
やっぱ女の子慣れだったようね。
「じゃ、俺らまだ話もあるし、飲み物だけオーダーしようか? けど、河合はアルコールはやめとけよ」
「えー・・・まだいける感じだけど、ならお茶系で」
「ならウーロン茶でいい? ったく女の子がそんなに飲んで酔いつぶれたらヤバいだろ? 結構知らない間に飲み過ぎてるもんだぞ? 立とうとしたらフラついて立てなかったりとか」
「あれ? もしそうなったら河原崎は介私を抱してくれないの? 家まで送り届けてくれないの?」
やけに河原崎に突っかかってる私は実は酔ってる?
「・・・あのな? 自覚は無いかもだけど俺だって一応男なわけで」
ムッとした声。怒った?
「なあに? 河原崎は酔った私に付け込んで不埒な真似をするような男なの?」
「俺がどうこうではなくて、一般的に男がそんな場になれば理性がどうなるかわかんないだろ」
「ふうん? 私は河原崎だったらかまわないけど。ちゃんと責任とってくれるんなら」
だよね? 私には彼氏もいないし、本当に河原崎に彼女がいないんだったらそういう仲になったってべつにおかしくはないよ? 猫に優しいし、理想的でもある。
んっ?! ちょっと大胆発言だったかな? 言ってから恥ずかしくなって来た。
ヤダ、これじゃ告白?!
「・・・待てよ? 俺らもう中学生じゃないんだぜ? 俺をからかうな!」
静かにドスが効いた声に、思わずビクって体が浮いた。
今まで見たことない河原崎のムスッとした顔。
どうして怒るの?
胃の辺りがキュッとして苦しい。そんな反応されるとは思ってもみなかった。
「わ、私・・・からかってなんかいないもんッ」
河原崎は昔から私の言葉を違えて取るの。いつもひねくれて解釈するのはなぜ?
「・・・河合、見かけは大丈夫そうでも実は酔ってんだろ?」
私は酔ってることにされて河原崎にお断りされたらしい。
「私、全然酔ってないけど。もういい。ごめんなさい。この話は終わりにしよ?」
軽弾みで迷惑なこと言ったみたい。けど、これで判明した。河原崎にとって私は『特別な繋がりを持つ同級生』という枠からは、出ない存在なんだ。
私、河原崎に何を期待していたんだろ? 変なの! むしゃくしゃする。
「河原崎が言うには私、自覚無く飲み過ぎて酔ってるんでしょ? ならもう帰る。今日は来てくれてありがとうございました。やっぱり自分の分はお支払いするね」
「えっと・・・急に・・・えっ? 河合は俺に打ち明けたい話があるんじゃ? それにまだ俺たちの今日の目的の核心の話が・・・」
そういうのもうどうでも良くなったから。
無視してテーブルの上に5千円札を置いて立ち上がる。
これだけあれば足りるでしょ?
何故だか涙が滲んで来た。
「・・・じゃ、サヨナラ」
お座敷を出て板敷きの木口縁に立ち、パンプスにスッと足を入れる。
「おい? なんで?! 河合、待って!!」
フックに掛けたジャケットとバッグを掴み、慌てる河原崎を尻目に、私は構わず通路を出口に向かう。
先にお会計中のカップルとキャッシャーの店員が『なんだろ?』って顔して私たちをチラ見してるけど、別にいいや。もうこの店には来ないから。
「ちょっ、俺、会計するから待ってて」
シカト。
自分で自分がわからない。どうして私はこんなに感情的になってるの?
引き戸を明けて外に出た。
あー、外は日差しがとても眩しいね。
軽い目眩、一瞬。
目の前が真っ暗になったけどすぐに治ったから平気。
さあ、三葉ちゃんの待っているお家に帰ろう。
バイバイ、河原崎。
河原崎ヤバし。女の子のご機嫌取りは大変だw




