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思春期未来志向  作者: メイズ
応報の少年編
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猫語しか話せない!

 昨夜は早めにベッドに入った。なんも考えたくなくって。


 *


 フッと目覚めた窓の外はもう明るい。


 5月の早朝。



 近くに転がっているはずのスマホを手探りで手繰(たぐ)り寄せて時間を確かめる。


 おい待てよ。まだ4時半だ!


 けど、なぜかすっかりスッキリ目が覚めているし。


 けどいいや、もう起きようっと。



 寝転んだまま、ウーンと伸びをした。


「うにゃーーーん」



 ・・・なんだ? 今の声? 俺、今伸びしたら変な声出なかった?


 ふふっ、土曜日に普段しない早起きなんかしたせいかもな。


 きっと目覚めに喉の調子がついて来てないんだ。



 階段を降りて洗面台に向かった。


 顔をバシャバシャ洗ってハンドタオルで拭きながら鏡に映る顔を見る。


 そこには、ヨレヨレTシャツを着た童顔の男子。


 ────チッ。


 心のなかで悪態をついた。



 2カ月前、入学したばかりの中学校。ようやく少し慣れて来たとこだったのに。


 昨日の金曜日。放課後の帰り間際、隣の席の女子の河合(かわい)にバカにされた。



「河原崎ってさ、見かけ小4くらいだよね。いつまでも若くてうらやま〜」


 しげしげと俺の顔を見つめる河合。


 しかも近くにいた周りの女子までそれに賛同した。


「河原っちはいつまでも可愛くていいよね〜。どうやったら成長止められるんだろう? 秘訣とかあるの?」


 真剣な顔で聞いてくるとこが更に憎たらしい。


「知るかよっ!」


 俺は乱暴に机横のリュックを掴んで、ガタッと大きな音を立てて席を立った。



「あ、河原崎ったら行っちゃった! クスクスッ・・・」


「ふふ、怒っても可愛いから怖くないよね」



 背中に聞こえるヒソヒソ声。


 同じ年のくせに俺をガキ扱いしてバカにしやがって。



 *




 帰った家ではずっと無言。


 機嫌が悪そうな俺を見て、妹が牛乳を飲むことを勧めて来た。


 イライラする時には牛乳がいいのだと誰かに聞いたことがあるらしい。


 本当の小4である妹のレイラと俺の背はさほど変わらないという現実が、ここで更に俺を鞭打つ。


 妹の気遣いも、背の低い俺を馬鹿にしているような気がして無視した。



 悲しげな顔された。


 レイラは事情を知らないっていうのに、ゴメン。


 けど俺は今、感情をコントロール出来ないんだ。



 あれから俺はイライラにモヤモヤまで加わって、夕食を黙ってムシャムシャ食べて、風呂入ってからほとんどなんもしないで、9時前には寝たんだった。



 *



 階段を降りて来る足音する。これはレイラの足音。


「起きてるの、お兄ちゃん?」


 階下で音がしたのに気づいて降りて来たらしい。


 ふぁ~っと大きな欠伸(あくび)をしたレイラの顔が、かわい面白くて笑いそうになった。



 昨日は俺を気遣ってくれたのに、無視したんだよな・・・


 丁度いい。謝っておくとすっか。



 ───昨日は俺、機嫌悪くて無視してゴメンな、レイラ。


 そう言ったつもりだったのに。


「にゃにゃにゃ、にゃにゃーにゃにゃおーん、れいにゃ」



 俺の喉から出たのはまるで猫の鳴き声だった。


「・・・フフフッ、お兄ちゃんったら朝からふざけて、何やってんの? 昨日のこと、私に謝るの照れくさいんでしょ? バーカ。フフン」


 生意気な顔でニヤニヤとそう言ってから、自分の部屋に戻って行った。



 1人取り残された俺。天気も良好、さわやかな土曜日の朝だってのに。



 心臓が次第にバクバクし始めた。どんどん強くなるドキドキ。



 ─────待て、落ち着け。



 あいうえおと言ってみようか。せーの、


「にゃにゃにゃにゃにゃ」


 ウソだろう?


 歌を歌ってみたら?


「にゃにゃにゃ〜、にゃにゃにゃみゃーん、みゃーん♪・・・」


 そんな馬鹿な! 猫の声しか出ないなんて!?!?



 わーーーーー!!!


 叫んで出たのは「ぎゃおーーーん!!!」だ。


 シッポ踏まれた猫の声じゃん!


 どうしちゃったの俺ッッッ?!



 俺は何らかの病気かも?


 スマホで検索。


 指先が震えてブレる。何回もやり直した。


 そんな妙ちきりんな病気はどこにも見当たらず。


 そうかッ!



 俺はマッドサイエンティストが極秘で研究し、密かに機能獲得した「言語を猫化する人工ウイルス」にどこかで感染してたのでは?


 待て。世界で俺だけ? 俺が世界初の猫語ウイルス発病っていうのは確率が低過ぎない?



 こうなったら事情通のAIに聞いてみるしかないッ! 



 【朝起きたら猫語しか話せなくなっていました。どうしたらいいですか?】



 ☆以下、AIによる回答


 朝起きて猫語しか話せなくなったなんて、まるでファンタジーの世界に飛び込んだみたいですね! まず、冷静になって以下のステップを試してみましょう:


 1. **状況を確認する**

  - 本当に猫語「だけ」しか話せないかチェック。人間の言葉を話そうとすると「ニャー」としか出ない? それとも思考や文字でのコミュニケーションは大丈夫?  例えば、紙に日本語を書いてみたり、スマホでメッセージを打ってみてください。もし書く・打つのは普通にできるなら、コミュニケーション手段として活用しましょう。

  - 近くに猫がいる場合、実際に猫と「会話」してみるのも一手。もしかしたら猫たちが何かヒントをくれるかも?(冗談半分ですが、意外と状況を理解する手がかりになるかもしれません!)


 ───AIも万能ではないようだ。思考が侵され文字も書けないならオマエに相談なんて出来てないだろう?



 2. **原因を考える**

  - 昨夜何か変わったことはなかった? 例えば、怪しいキャットフードを食べちゃったとか、猫の神様を祀る神社でお参りしたとか、寝る前に「猫になりたい!」と強く願ったとか…。原因の心当たりがあれば、それを逆にする方法を考えてみる。

  - 夢や一時的な現象の可能性も。鏡を見て自分の姿を確認したり、軽く頬をつねってみて「現実かどうか」確かめてみましょう。


 ───心当たりは全くない。そしてこれは現実であることに間違いはない!



 3. **対処法を試す**

  - **水をかぶってみる**:日本のアニメや昔話では、変身や呪いを解くのに水をかぶるシーンがよくありますよね。一か八か、シャワーを浴びてみる?

  - **猫と交流**:もし猫語で猫と意思疎通できるなら、「どうしてこうなったの?」「戻る方法知ってる?」と聞いてみる(笑)。猫の反応をよく観察。

  - **専門家に相談**:言語学者、獣医師、またはスピリチュアルな専門家(?)に連絡。文字で状況を説明して助けを求めましょう。Xで「#猫語しか話せない」とポストして助けを求めるのもアリかも(冗談ですが、意外と誰か反応してくれるかも)。


 4. **猫語を活かす**

  - もしすぐ解決しそうにないなら、猫語を活かして楽しむのも手!  猫カフェで働いてみる? 猫たちと仲良くなれる特技として、YouTubeで「猫語人間」としてデビューするのも夢がありますね。


 5. **最終手段**

  - どうしても戻れない場合、近くの神社やお寺で「人間の言葉を取り戻す」お祈りを。猫の神様(?)に「もう十分ニャー!」と訴えてみる。


 冗談はさておき、もし本気で困っているなら、まず文字で周囲に状況を伝え、医師や専門家に相談するのが確実です。もしかしてこれは夢の中の出来事? もう一度寝て起きてみるのもいいかもしれませんね。 何か具体的な状況や「こうしてほしい」という希望があれば教えてください!  ニャー!


 *



 なんだか俺のこの焦燥感と、ヒタヒタと近づいてくる悲壮感を理解してない緩い回答だ。けど、ヒントは得た。


 いっそのこと本家本元、猫に聞いてみればいいのか! 俺は猫語は喋れるわけで。


 ヨシ!



 俺は着の身着のまま大急ぎで野良猫求めて外に出たのだった。

 

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眠りにつく前に
魔女狩りに遭う運命を察知した少女の運命は・・・
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