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▪︎

 人ごみの向こうで、騒ぎが起きていた。


 ああいうの、苦手だ。関わりたくない。

 けど_見るからに絡まれている様子を見て見ぬふりするのはもっと苦手なんだ。


《初心者のうちは女の子よく狙われるから、エイトも気をつけてあげなよー》


 あの間延びした声を思い出して、ため息をつく。

 ゲーム内の仲間「ツキ」。大胆なプレイをする、物怖じしないやつ。


(……ったく。お節介も、たまには悪くないか)


 腰のポーチからスモークボムを取り出す。

 低レベルじゃ買えないレアアイテム。こういう時のために持ってた。


 「こっち」


 「えっ?」


 驚いて振り向く彼女の手首を掴む。

 細い。初心者用の装備。戦えないやつだ。


 「……逃げ切れた」


 ふぅ、と小さく息をついてから、言葉を探す。


 「ああいうの多いからな、初ログインの女アバターには」


 「君、初心者だろ。クエストがあるからうちのパーティーに入ってくれないか」


 なんだよその言い方って、自分でも思う。でも、どう言っていいのかわからない。

 昔から、人に優しくするとき、いつもぎこちなくなる。


 (ツキならもっと自然に誘えるんだろうな)


 「え? クエスト……?」


 「“初心者を連れてダンジョン攻略”って条件。今やってる。……嫌だったら断ってくれてもいい」


 目を合わせずに言った。

 嘘じゃない。そんなクエスト、本当にある。

 ただ、今はそれを口実にしただけ。


 「……いや、行きます。行かせて下さい」


 「なら、これ」


 そう言って渡したのは〈雲隠れのケープ〉。

 これもツキが「初心者守る用に使えるよ」とくれたやつだ。

 何だ?今まで気にしたこともなかったが、アイツの趣味は初心者助けなのか?


 「つけて。しばらく追われにくくなる」


 『B』さんは驚きながらも、大人しく装備してくれる。

 ……やっぱ女の子か、声的に。っていうか、今さらだけど可愛い声だな。


(ま、どうでもいい)


 視線をそらして一言だけ。


 「……行くぞ」


 彼女は少し間を置いて、うん、と頷いた。

 オレはそのまま歩き出す。振り返らなくても、足音がちゃんとついてくる。


 …スカしてるって思われてないかな。嫌がられてない、とは思うんだけど……

 人と関わるの苦手なのにやっちまったなぁ……


 とりあえずそのままツキの待つギルドへ向かうことにした。

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