行方
「それも一つの方法ですが、従者がいなくなるのは不利になるだけです。それを防ぐつもりはあるのでしょうか?」
メアリは従者である三の心配をする。ある意味、死亡宣告されてるのと同じだからだ。しかも、アルカイズは彼女を囮にすると言っていたらしいが、側にいるわけではなさそうだ。
「食堂内にいるなら、私達が見えてないとおかしいわけだし、自分の人形が発見されたと耳にしたら、話を聞くために姿を見せるでしょ」
キス達は食堂にアルカイズがいない事は確認している。三を囮にしているはずなのに、近くにいないのはおかしい。死神がカイトの視線を借りて見ているのとは別で、離れた場所から周囲を見る事が出来る魔法を使用しているのか。
「彼が気配遮断の魔法に磨きをかけたのか。もしくは、遠見の魔法を使えるようになったのか……」
ディアナはそう言うが、前者の可能性は低い。完全に気配を遮断出来るのなら、客室に隠れる必要はない。後者であるかの確認に過ぎない。
それでも遠見は見るだけであり、聞く事は出来ない。ディアナ達が三と距離を取れば、彼女の前に現れるか、手紙を取りに来るのだろう。
「いえ……アルカイズ様の気配遮断は完全に消すのは無理のままです。遠見とは……離れた場所から見る事が出来る物であるなら、使えないはずです」
アルカイズは気配遮断を強化しておらず、遠見の魔法も使えない。使えたとしても、魔法の回数制限により、三を守るための魔法は使えなくなっているはず。
侵入者の事を考えるなら、撃退するために魔法を取っておきたい。今の時点でアルカイズは一日の魔法回数制限を越えているかもしれないが。
「はぁ……アルカイズの事はもう放っておいてもいいんじゃない? 侵入者の事は警戒してるようだし、私達がここにいる間にディアナの従者が死んだ部屋を見てるかもしれないでしょ」
「そこは零に片付けないようにと、貴女が頼んでいましたからね。客室を調べていくのなら、当然辿り着くでしょう。自身の人形もある事にも気付くはずです」
メアリ達魔法使いが一階に揃っているのなら、アルカイズは自由に二階を調べられる。ただし、従者が側にいない状態は危険ではある。
「アルカイズ様もそうなると、隠れるのが優先になるのかもしれません。ですが、彼の部屋の鍵が壊されたのなら、そこにいようとするかどうかです」
アルカイズの部屋はすでに一度侵入されている。自身の道具はあれど、そこはすでに安全な場所では無くなっているのだ。ならば、気配を消した状態で転々と移動した方が安全なのかもしれない。
「でしょ。アルカイズの事は置いとくしかないの。最悪、夕食の時には流石に姿を見せるはずよ」
昼食を各自で取る事になっているが、夕食は違う。朝食と夕食の二度は全員が集まると決めている。
今の状況で、それを破るのは裏切りに等しいのはアルカイズも分かっているはずだ。




