収納ポケット
「相手が高位の魔法使いであると、アルカイズ様は判断した結果、私を囮にする事を選んだようです。食堂で手に入れた鍵も今は私が所持しています」
「そういう事ね。首が切られた人形はどうしたわけ? 流石にそんな不気味な物を部屋へ放置はしないでしょ。見てみたいんだけど」
「それも私が所持しています。今お出しします」
三はキスの指示通り、着ている燕尾服の中から自身似の人形を取り出した。
『あの人形を燕尾服から取り出したのか? そんな物があるようには見えなかったぞ』
死神が見る限り、三の燕尾服が人形を入れていた事で膨らんではいなかった。
「ああ!! それは燕尾服には加護があると言いましたよね。彼はそれを破られてしまったわけですが、他にもポケットにはある程度の大きさなら収納出来る事ようになっているのもあります。主が必要な際、すぐに渡せるように。勿論、大きさや入る数も限界はありますが」
『それは君の燕尾服にも?』
「僕の燕尾服にもあります。ですが、物を小さく出来ても重さは変わりません。そこまで重いのを持ち運べるわけでもないんです」
従者の燕尾服には加護だけではなく、ある程度の大きさの物であれば、収納出来る機能もあるらしい。とはいえ、重さに変化はない事から、持ち運ぶのには限界はありそうだ。
メアリが荷物を小さくして、持ち運んできたのと似たような物だろう。鞄は持ち運びに特化したからこそ、重さも軽く出来たのだろう。
さして、問題がある事ではなく、カイトも加護と共に説明しなかったわけだ。
「これが……失礼な言い方ですが、綺麗に首が切られていますね。凶器が落ちていたという事はなかったのですか?」
キスだけでなく、メアリやディアナも三が取り出した人形を確認している。
三の人形は首から胴体がスパッと綺麗に分断されていた。
十の人形の場合、背中にナイフのような物が刺されていた。凶器は発見されてないが、同じような殺害方法だと考えられる。
首を切られる凶器が判明していれば、警戒はしやすくなるはず。
「ありませんでした。首を切る事は簡単なはずはなく、魔法を使う相手だとアルカイズ様は判断されました。その時がチャンスだと」
アルカイズは侵入者が三を殺すために魔法を使用したところを捕まえるつもりのようだ
それが失敗すれば、三は死んでしまう。いや、犠牲にしても良いとまで思ってる可能性はある。
アルカイズの人形が見つかったとなると余計にそう思うだろう。




