侵入方法
「……侵入者は何時、どうやって、アルカイズの部屋に入ったのかですね」
侵入者が全員分の人形を奪った後、二つの部屋に人形を置いた事になる。客室にはアルカイズの人形を置き、身を潜めていた可能性はある。
だが、アルカイズの部屋に三の人形を置くのは無理な話になる。アルカイズは一度部屋に戻り、その時には人形を目にしていない。
時間的に廊下にはディアナ、メアリ、彼女達が衣装室に入った後には三が出ている。
更に言えば、アルカイズの部屋に入るためには魔導具の解除も必要となる。それを僅かな時間で出来るものなのか。
つまり、侵入者がアルカイズの部屋に入る隙がない。
「魔法を使ったのでしょうか? それだと辻褄が合わなくなりませんか?」
「ええ。魔法の回数制限を超えているはずです。それは侵入者も同じだと彼女は言っていたわ。それを試すにしても、三回を使い切ってからでないと」
零はディアナ達同様、侵入者も一日に三回しか魔法を使えないと言っていた。それはメアリの感視でも感情の変化はなく、嘘の可能性は低い。
試すにしても、魔法の無駄使いはしたくないのが実情だ。
「……私を続けても宜しいでしょうか?」
「そうですね。お願いします」
三は割り込んできた会話が一旦止まったのを見て、話を続ける。アルカイズと三が別行動を取ってる理由をまだ話していない。
「アルカイズ様は鍵を調べると、魔導具が壊されていたのですが、それに対して魔法を使った形跡はなかったらしいです」
「直接、魔導具に魔法を使って破壊したわけではなく、間接的だとしても、彼が分からないとするのは」
ディアナはアルカイズが使われた魔法に気付かない事に驚きを隠せないでいる。それ程に彼の実力を買っているのだろう。
『魔法というが、君達は物理的には考えないのか? いや……そもそも、魔導具は魔法なしで壊せる物なのか』
死神は疑問を口にした。魔法や魔導具のある世界だとしても、それ以外に別の方法はあるのではないか。
「壊せます。僕も間違って、メアリ様の魔導具を壊した事がありました。下に落ちた衝撃だけでも使えなくなる時はあります」
魔導具を破壊出来るのは魔法だけ……ではないようだ。しかも、精細とでも言えばいいのか、普通に衝撃を与えるだけでも壊れたりする物のようだ。
「ですが、今回は難しいのではないでしょうか。鍵の魔導具は部屋の内側にあるはずです。それを魔法以外で壊すには、部屋の中に入るしかありません。ドアごととなると、流石に目の前の部屋にいたアルカイズ様が気付かないわけないです」
『そうだな。私達も十が殺された客室に向かう際、その部屋を通り過ぎている。壊れでもしていたら、気付くはずか』
通り過ぎるのもそうだが、十が殺された事で、余計に違和感を覚えたに違いない。アルカイズを疑う事も少しはあったからだ。




