拒否
「アルカイズ様に急ぎ取り次いで貰いたいのですか」
「そうよ。アンタの主であるアルカイズに危険が及ぶ事があるから。これに関しては、私達が直接話した方がいいし」
キスが軽く三に詰め寄った形で話をしている。
死神とカイトの会話の時間が終わり、彼の考察は可能性の一つとしてはありだと、ひとまずは置いておく事になった。
「アルカイズ様が自身の安全を考慮し、気配を消す魔法を使用したのは分かっています。ですが、彼の人形が無惨な姿で見つかったのです。他にも伝える事があるのですが……最悪、貴女が伝える形でも」
「私の従者があの人形のように殺されています。それが意味する事が分かりますよね」
メアリがアルカイズの人形を発見。ディアナが十の死を伝えた事で、三は主の心配をするはずなのだが、慌てる様子もなく、平常時のままだ。従者として当然の姿ではあるのだが……
「事情は把握しました。ですが、主の元へ案内する事は出来ません。ディアナ様達のお言葉も何時伝わるかも判断致しかねます」
三はメアリ達の言葉をアルカイズに伝えるのを拒否した。
「……はっ!? 百歩譲ったとして、アルカイズの場所に案内するのを拒否するのはいいわよ。それが主の命令だったらね。けど、その主の危険をアンタは知らせないつもりなわけ!!」
主の危険を教えない従者に対して、キスは激昂した。だが、三にも理由があった。
「違います。私自身が主の居場所を知らないからです。何かあった場合、部屋に手紙を置く事になりました。それを主が何時読むのか分からないだけです」
「何故ですか? 気配を消したとしても、共に行動した方がアルカイズ様も安全のはずです。探索は貴女一人でやる事になったのですか?」
館の探索の際、ドア等を開けるのは従者の役目。単独行動ではそれも出来ないはず。
逆にいえば、魔導具や魔法が関係する事は従者だけでは危険でしかない。
ディアナのように十を失ったのであれば話は別だが、魔法使いと従者は二人一組で行動するべきなのだ。
それはアルカイズ自身も承知のはず。でなければ、従者を連れて来るはずがない。
「何があったのか、話してください。そうすれば、私達も納得します」
アルカイズと三は気配を消して、メアリ達の様子を窺っていたわけではなく、探索をしていた事になる。その時に一体何があったのか。
「分かりました。これを話す事に対して、主が悪くなる事はありませんので」
三はアルカイズと探索時に何が起きたのかを話し始めた。




