ゴールド=ゴール
『移動するならば、少しは手助けをしようか。館内の地図を見えるようにしておく。とはいえ、死者達の記憶から作った地図だ。メアリ達が確認してない場所は抜けているから、注意するように。片目を閉じると、もう片方で地図を把握出来るようになる。だが、時間は止まらないから、注意しておくように。今は私との会話中であるから、試しても構わないぞ。目は動くようにしておく』
カイトは頭の中で感謝の言葉を述べ、地図が目に映るのかを確認する。
最初に映ったのは館の一階の地図。食堂や調理場、浴室、従者室、空き部屋等、メアリ達が確認した場所が表示されている。
『目を瞬きをする事で階を変更出来る。この館は二階から地下一階までは確認されてるようだな』
カイトは目を閉じ、もう一度開くと二階の地図に変更されていた。そこにはメアリの部屋の位置も書いている。
彼が来た事で部屋の場所が変更する事はないだろう。一階に従者の部屋があったのは、カイトを含め、そこに従者が全員寝泊まりすると予想される。人数が増えた事で、もう一部屋追加するかもしれないが。
「その必要ありません。御三方の協力もあって、準備は整いました。メアリ様もようこそ。出迎える事が出来ず、申し訳ありませんでした」
カイトが二階の地図を確認しているところで、死神との会話が途切れたのか、時間は動き出していた。
二階から降りてきたのは従者達四人。メアリ達に頭を下げたのが、館の主である魔法使いの従者だろう。
他の三人はすぐにディアナ達、主の側に寄っていく。其々が主のマントと同じ色の燕尾服を着ている。
それはカイトも同じ。魔法使いと共に行動する以上、飾りとして、周囲に馬鹿にされないよう、服飾を綺麗にしておく必要があるのだ。
ディアナとキスの従者は少年。アルカイズと館の魔法使いの従者は少女と、全員がカイトと同年代に見える。
「いえ……気になさらないでください」
メアリの言葉に、カイトが代わりに頭を下げる。
「ありがとうございます。それでは、皆様を部屋にご案内します」
館の魔法使いの従者であり、灰色の燕尾服を着た少女は、メアリ達を二階へと案内しようとする。
「ちょっと待って。長旅でまずはゆっくりと休みたいところではあるのだけれど、私達全員揃ったのだから、先にこの館の主にお目通しして欲しいわ」
「キスの言う通りですね。回復の魔法自体が幻のような物。それを目にしたいのもあるし、そんな魔法使い自体が存在するのか確認は必要でしょう」
キスとディアナは体を休めるよりも、先に館の主に立ち会う事を選ぶ。
「ゴールド=ゴール。歴史に名の残る魔法使いの名を使ったのだ。偽りの名であると考えても仕方あるまいよ」
アルカイズから館の魔法使いの名前が出てきた。招待状、手紙の送り主がゴールド=ゴールになっていたのだろうが、誰も彼本人だと信じてないようだ。
『ゴールド=ゴールと名が出てきたが……存在はするようだ。魔法で金を生成した事で、君の世界では有名らしい。彼の記憶の本からも読み取れる。彼はこの事件とは全くの無関係だが……』
死神は館の魔法使いの名が出た事で、本棚を調べたようだ。その中に彼の記憶、本になっているのはすでに亡くなっているという事。しかも、本人は事件と関係ないらしい。しかし、死神は最後に含みのある言い方をした。
『まぁ……流石に君も偽者だと分かっているようだな。余計な口出しだった』
カイトはメアリに送られてきた手紙の中身を一度確認していた。ゴールド=ゴールの事も調べ、一昔前に亡くなっているのを知り、別人であると分かっている。ただし、彼本人の姿は写真や絵でも見た事はなかった。
「彼の肖像画を飾っているという事は、彼の弟子でしょうか。尊敬する存在なのかもですね。本当に回復の魔法なのでしたら、彼と同等の功績になるわけですし」
メアリは二階の踊り場の肖像画が、館の主ではなく、ゴールド=ゴールだと口にした。絵を飾るとなると、彼の関係者だと彼女達に思わせても仕方はない。
とはいえ、メアリはディアナ達とは違い、疑いの目ではなく、純粋に知りたいという目のようだ。