カイトの考察
『メアリ達の意識は三に向いている。彼女の話を聞く前に君の考察、話を聞いておこうか』
カイトと死神の会話は中断していたが、三が近付いてきたタイミングで続きを話す事に。
彼女の話が重要になるのなら、先に話した方が集中して話を聞く事が出来るからだろう。
「分かりました。侵入者の事なんですが……館の魔法使いのゴールド=ゴールではなく、零が招いたという事はないでしょうか?」
『そう来たか。根拠はあるのか?』
「いえ……想像に過ぎません。ですが、ゴールド=ゴールが招いてないというのは嘘にはなりません。侵入者を協力者として、メアリ様達を疑うような事を彼女は言いましたが、実は彼女自身が主を裏切っている。それがメアリ様が見た愉悦の色なのではと」
『なるほどな。だが、彼女がどうやって魔法使いを招き入れる。立場として逆ではないか。君はそこをどう考える』
魔法使いの命令で従者がその手引きをするのは分かるが、立場が逆になる。従者の指示で動く魔法使いはいない。
死神は何か思い当たる節があるようだが、カイトに答えさせる。
「逆ではないかもしれません。零が招き入れたのはゴールド=ゴールド以前の主だとすれば、その主からの命令とも考えられます」
数ヶ月前、零はこの継承権争いのためにゴールド=ゴールの従者に選ばれた。それ以前の彼女の経歴が分かっていない。
彼が零の初めての主なのか。いや、彼女の年齢からすると、別の主に付いたのではないか。
従者の経験もあり、ゴールド=ゴールの出会った魔法使いの従者だったのかもしれない。
『前の主と繋がっているか。それなら、メアリ達が魔法使いの名前も知らないのも頷ける。彼女が命約をしていない理由がゴールド=ゴールの寿命ではなく、前の主の命約が切れてないからと』
零はゴールド=ゴールと命約はしていない。となれば、彼から零が従者だと告げられてない以上、別の主がいる可能性もゼロではない。
『それも考えられる事だが、一つ忘れているぞ。ゴールド=ゴールはメアリ達しか継承権を与えない。招待状にも書いてあったのもあるが、零自身がそう言っている。しかも、メアリが感視でその言葉に変化はなかったはずだ』
「そうでした……メアリ様が嘘を言うはずがありません。魔法使いの方にもメアリ様を殺すメリットがないですね」
メアリ達を殺したとしても、回復、予知の魔法を継承出来ないのであれば無意味。零が協力者であるなら、それを伝える事も出来たはずなのだ。
『いや……継承権に関してはそうなだけだ。別の理由があれば可能性はある。彼女達を個別に恨んでいる場合だ。館で死んだ場合、継承権争い、試練に失敗と周囲の人間達に思わせるのが狙いだったらな』
別の理由。四人が恨まれている可能性。カイトとしてはメアリが恨まれる人物ではないと思っているだろうが、人に恨みを買うか分からないものだ。妬みや嫉妬もある。
『さっきのは一つの例だ。継承以外のメリットがあるかもしれない。その考えは持っていても損はない。そうなると彼女の後を追っても良かったかもしれないが』
「すみません。流石にこんな意見をメアリ様だけならともかく、キス様達の前では」
ああいう場面で従者の発言権はないに等しい。ましてや、キスの前だ。侵入者の件もあって、協力関係になっているのを、カイトが意見する事で破綻するかもしれない。




