三
「今は見えている状態ですよね。魔法的に一番怪しまれるのだから、流石に毒を仕込むのはしないかと」
「従者が毒味もします。私の場合、その従者もいなくなったわけですが……貴女達の食事を確認するしかないですね」
「従者がいなくなるとそこらが面倒になるわね。一人しか連れて来れなかったのが痛手しかないわ」
従者がいなくなれば、任せていた事が自身にのしかかり、ゴールド=ゴール捜索に後退は余儀なくされる。
「試練を考えると、多数を呼べないでしょう。アルカイズが毒を仕込む事はなくとも、侵入者がする可能性はありますね」
侵入者が無差別にメアリ達を殺すつもりであるなら、毒を仕込む事も考えないといけない。
だが、彼女達は毒で死んでいない。一人ならば可能性はあるが、彼女達が同時に死んでいないからだ。
「注意する事に越した事はないけど、人の出入りが難しい食堂に忍び込むのはないでしょ」
食堂は館の出入口近くにある。侵入するのは簡単ではあるが、自由に出入り出来る事から、発見されやすい。
「キス様。彼女はあそこで食事をしているようです」
先に食堂へ足を踏み入れたのは七。先頭を七で進み、主を挟む形で後尾がカイトとなっている。
「食事をしているという事は、先にアルカイズは食べ終ってないと駄目なのよね。けど、アイツの姿は薄目にしても見当たらないわ」
主を差し置いて、先に従者が食事をする事はない。あるとすれば、そういう命令があった場合のみ。
アルカイズが食事を終えたとしても、食堂に彼の姿は見当たらない。
気配を消す魔法でも、辺りを凝視するように見さえすれば、姿を確認する事が出来るはずなのたが。
キスだけでなく、メアリの目にもアルカイズの姿を確認出来ない。
「私の目にも映らないのだから、食堂にはいないのでしょうね。調理場にしても、彼が直接行くとは思えません」
ディアナの場合、アルカイズと付き合いが長い事もあり、彼が食堂いた場合は見破れるはず。それが出来ないのは、食堂にいないという事。
アルカイズ自ら調理場へ食事を取りに行くわけがない。調べるためだとしても、三は連れて行くはず。
「私達に気付いたようですよ。食事を止めて、こちらに来ます」
三はキス達の会話が聴こえたのか、ディアナ達の方に視線を向け、メアリと目が合った。
アルカイズではないが、魔法使いに声を掛けられた場合、従者はそちらを優先するようになっている。勿論、それも主の命令がない場合だが。
「ディアナ様、キス様、メアリ様、三人お揃いのようで。どういった御要件でしょうか」
三は三人の魔法使いを前に動じる事なく、彼女達に要件を伺った。




