断言
「……はっ!! 馬鹿にしないで。私達が別の魔法使いに協力を求めるわけがないでしょ。それで継承が無理になったら意味がないし。回復や予知とか、誰もが欲しがる魔法なんだから、下手したら寝首を掻かれるだけよ」
キスは零の台詞に思わず反論した。キス自身だけでなく、ディアナ達も協力者の魔法使いはいないと断言する。
「彼女の言う通りです。貴女は従者になって間がないのでしょう。魔法使いは下手に仲間を増やしたりしません。契約、代償、裏切り等、色々ありますから。あるとしても、束の間の協力だけです。重要な時こそ、協力者の存在が危険なのですから」
ディアナもキスの意見に賛同した。魔法使いであるからこそ、貴重な魔法を横取りを狙う可能性がある。仲間を呼んでも、いつ裏切られてもおかしくない。そんな相手を呼べるわけがない。
『二人が言っている事は間違いではないだろうな。何度も言うが、メアリを含めた四人の魔法使い以外の名前は分かっていない。協力者に裏切られたとしても、誰かはその名前を知っているはずだ。名前も知らない相手に頼むのは危険でしかない』
「……ですね。メアリ様も一人でした。私を引き取った魔法使いに協力を求める事はしませんでしたから。という事は、零はメアリ様達に揺さぶりをかけてきたのでしょうか?」
『どうだろうな。メアリの感視でどう見えてるかで分かるのではないか?』
メアリは零から視線を外さない。ディアナとキスの言葉に彼女も同意であり、二人の真偽を見る必要もないのだろう。
「そういうものなのですか? 主を疑うのなら、他の人達もと思っただけで、他意はありません。火種を撒くつもりなんて毛頭ないです。争いは禁止と言ってますので」
零は少し驚いた顔をしている。純粋に思った事を口に出しただけだと思わせる。
「もし、本当に侵入者が存在して、皆さんを殺害したとしても、継承の権利はありません。奪い取る事は無理だと断言します」
侵入者はどうあがいても継承権を得る事は不可能。彼女が強く断言するというのは、ゴールド=ゴールからの指示がすでにあったのだろうか。
「それも分かっています。招待状に私達四人の魔法使いの中と書いていたのは、契約と同じですから」
「それなら一体何が聞きたいんですか?」
「魔法使い同士の争いは禁止となっています。それが侵入者である魔法使いに対しても適用されるかどうかです。あちらが攻撃してきても、私達が反撃出来るかどうか。それをしたせいで継承が破棄されたら、どうする事も出来ません」