死神の見解
『第一にこの展開、侵入者がいると疑う場面は出ていると思う。それが彼の死の直後なのか、ディアナが殺された後かもしれない』
「そうですね。彼のような死が続くのなら、疑って当然だと思います」
本来の事件も侵入者を疑う場面はあった。警戒もしていたはず。
『館の魔法使いは省くが、記憶の中には三人以外の魔法使いの名前が上がっていない。三人は目撃していないのだ。館の魔法使いという別名が上がっている以上、魔法使いを色で判断してもおかしくはない』
侵入者の本名は分かっていなくても、ディアナが青、キスが赤、アルカイズが白等、何色の魔法使いと判断はつくはず。
『もし、侵入者を撃退したのなら、その存在が記憶にあってもおかしくない。対峙し、その魔法使いに負けても同様だ』
戦闘が許可され、勝負の行方がどちらでも魔法使いの存在は分かっているはず。
だが、メアリを含めた魔法使い全員が誰に殺されたのかも分かっていない。
『それにキスは攻撃魔法を得意としている。やすやすと侵入者相手に倒されないのではないか』
「それを考えると、アルカイズ様の魔法もそうですね。気配を消せるわけですし、殺すのは難しいだけでなく、その魔法使いを目撃してもおかしくないです」
侵入者といえど、気配を消したアルカイズを見つけるのは難しいのではないだろうか。彼を見つけるため、移動するのはメアリ達に目撃される可能性が高い。
それなのに十の次に発見されたのはアルカイズの人形だ。発見されやすい場所に置かれているのは不自然ではないだろうか。
『そういう事だ。侵入者を警戒するのもいいが、そのために魔法を温存するのは足元を救われかねないからな』
侵入者用に魔法を温存させる事で、罠による死を誘発させる。それも一つの試練として考えられる。
「侵入者の存在自体は否定しないのですね」
『メアリ達よりも優秀な魔法使いであれば、暗殺も可能かもしれないからな。侵入者の存在を確定も否定も出来ない。彼が死んでも、何も分かってないに等しい状況だ』
侵入者の存在の有無。死体と凶器消失。他の人形の行方。事件の進展は一歩進んで、ニ歩下がる状況ではないだろうか。
「ここは全員で彼女に会いに行きましょう。メアリさえ良ければ、魔法を使って欲しいのです」
「メアリの魔法? そういえば、アンタの得意な魔法は知らないわね。ディアナは知ってるようだけど」
メアリの得意とする魔法は感視。感情の変化を読み取る。心を読むまではいかないが、それに近いところまでは予想する事が出来る。
今朝も零に対して使用したばかりだが、そこまではディアナも気付いてはいないようだ。




