侵入者
「降りて来たんだ。二階に鍵が合う場所がなかったわけ? こっちも一階の部屋に合うところは……って、ディアナ……従者はどうしたのよ。アンタも別行動させてるわけ?」
メアリ達が階段を降りる際、キスがその近くに立っていた。一階の部屋に鍵が合う場所がなく、ディアナ達が降りてくるのを待っていたのかもしれない。
「アンタも? ……という事は、アルカイズの従者は別行動を取っていて、一階に降りてきているのですか?」
「そうよ。降りてくるのが目に入ったからね。アイツは気配を消す魔法を継続中なんでしょ」
三に対する気配遮断の魔法は効果が切れたのか、解除したのか。様子見は止めて、従者だけでも動かそうとしているのか。
彼女が生存している以上、アルカイズが無事である事は間違いない。
「アルカイズ様が隠れているのなら、従者にあの事を伝えて貰ったら」
アルカイズが気配遮断の魔法を継続しているのなら、従者である三に伝えてもらうしかない。
「何かあったわけ? 私にも教えなさいよ。アルカイズを探してるって事は、従者の人形がまた見つかったとか?」
「分かっています。順々に説明していきますから。キスは十以外の人形をまだ発見していないのですね」
キスはメアリとディアナの雰囲気に、何かあったのか察した。
「言ったでしょ。鍵に合う部屋は一階にはなかったって。廊下に誰かの人形が転がっている事もなかったわ。七もそうよね」
七もキスの言葉に頷く。主の言葉なのだから、首を横に振るはずはないのだが、彼女の反応からして、嘘は言っていないだろう。本当に何も知らない様子だ
「……それでは私達に起きた出来事を話していきます。嘘偽りはありません。彼女も共に行動していましたから」
零の説明にもあったが、候補者同士で協力する事は禁止されていない。
メアリは余計な言葉を付け加えず、ディアナが事の顛末をキスに伝えていく。
「ディアナの従者が殺された? 予知通りになったって事!?」
キスは話を聞くにつれ、青ざめた表情になっていく。予知通りに死んだとなれば、自身の人形が見つかった時の恐怖が出てくる。
「私達が鏡越しに見た限り、背中から刺され、人形の姿通りになっていました。ですが、アレは罠ではなく、何者かが直接手を下していると、私達は判断しました」
「何者かが……私じゃないし、七でもないから。争いは禁止されてるじゃないの。私達以外の何者かが侵入でもしてるわけ」
「……その可能性もありますね。私達に秘密にして、館の主が別の魔法使いを用意している事も」
『別の魔法使いか。死体や凶器の消失を考えれば、相手は魔法使いになる。だが、彼女達の記憶にはない。ゴールド=ゴール同様、見つける事が出来ていないのか。実在しているのかは分からないわけだ』
確かに館の主であるゴールド=ゴールが直接動くよりかは可能性はある。
館付近の結界もなく、侵入する事も出来る。その場面に十が転移した事による相手は殺害に至ったというのはありえる。
第三者の魔法使いはないと思われたが、ここに来て、怪しい存在が出てくる事になろうとは。




