一階へ
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「まずはアルカイズ様を見つける事からになりますか? 普通に呼んだとして、姿を現してくれるかどうか」
カイト達三人は十が死んだ客室から廊下へ。
彼は念の為に廊下の床を確認するが、血の痕跡はなかった。死体を廊下へ出してはいないようだ。
アルカイズの人形は持ち出さず、血溜まりの中に置いた状態のままにしてある。
その方が十の死と共に人形が置いてあった事の証明になるからだ。
「……一階に行きましょう。キスからでも問題ないはずです。私達が衣装室を調べている間に彼が一階に移動しているかもしれません。それをキスが気付いていれば良いのですが」
ディアナは一階に行く事を提案した。
気付けば、時間は十二時を過ぎていた。昼食は各自が調理場にある料理を食べる事になっている。
アルカイズが食堂へ向かう事も考えられる。下に降りる時の階段の軋む音で、誰かが一階に降りてきた事にキスが気付くかもしれない。
ディアナとメアリがここにいる以上、その人物は彼しかいない事になる。
「分かりました。彼が亡くなった事はキス様にも伝えると思うのですが、彼女……零にも教えるべきだと思いますか?」
彼女は従者の部屋で休んでいるはず。下手すれば、主であるゴールド=ゴールの邪魔をしないためとも取れる。
邪魔というのは勿論、ゴールド=ゴールが十を殺害した場合だ。
『今のところ、彼を殺した一番の容疑者は零の主であるゴールド=ゴールになる。殺害もそうだが、隠蔽も考えるとな。ただし、動機はあるのか。彼は罠で死んだわけではない。殺される理由が何かあった事になる』
「それを考えると……従者を殺さないと、魔法使いに届かないからですか?」
従者が殺される理由はそれしか考えられない。恨み等を買うにしても、従者にではなく、主に向けられるはず。
だが、従者を殺さなければ、主に届かない。
『魔法使いと従者の関係上そうなってしまう。ゴールド=ゴールは最初からディアナ達を狙っていた事になる。あの場にアルカイズの人形が置いてあったのもそれだ』
ディアナ狙いであれば、彼女の人形を置けばいい。アルカイズの人形を置いたのは、彼も狙われているからと考えてもいいだろう。
彼の人形がディアナの警戒を弱くするためとも取れなくはない。
意識の分散。狙われているのはディアナだけでなく、アルカイズもとなれば、警戒心が少しは薄まる。
「彼女が部屋にいるのかを確認しましょう。まずはそこからです。私もあの部屋を調べておきたいのもあります」
従者の部屋はカイトだけでなく、魔法使いであるメアリも確認している。そこに魔導具があれば、彼女も何かしらの反応をしているはずだ。
鏡以外に転移する方法があるのか。それがあるなら、地下への道も考える事が出来るようになるのだが。




