殺害予告
『落ち着け。順番が間違っているとは限らない。見つけたのがアルカイズの人形というだけだ。探索しているのは君達だけじゃないのを忘れるな』
カイトはメアリとディアナに誰の人形だったのかを冷静に説明していたが、内心はそうではいられなかった。
死神が事前にディアナが先に死ぬと彼に教えていたからだ。
彼が参戦する事によって事件に変化が起きてもおかしくはない。少しの変化はあったが、これが大きな転機となる可能性もある。
『キスやアルカイズが人形を見つけているかもしれない。そうでなければ、おかしいはずだ。ここにいる者達が命約の事を知らないはずがないのだから』
命約がある限り、魔法使いよりも先に従者が死ぬ事になる。それが適用しないのは寿命や魔法使いと従者の距離が離れている事。
両者がこの館にいるのだから、距離の問題は無くなる。アルカイズの寿命に関しては論外だ。
「彼の人形ですか。だとすれば、別の場所で従者の人形も見つかるかもしれませんね」
メアリもアルカイズが先に死ぬ事はなく、三の人形が何処かにあると考えているようだ。
「そうだとしても、彼の死は予知された事になります。……もしくは、殺害予告でしょうか」
十に続いて、アルカイズも人形通りに死ぬ。それがゴールド=ゴールの手によるものならば、予知ではなく、殺害予告となるのではないか。
「これを見ると、十を殺したのは彼ではないようですね」
ディアナはアルカイズが十を殺した相手だと疑うのを止めたようだ。
『敢えて人形を置いて、疑いから外れる事も考えられなくもないが。彼は従者の部屋から人形を奪う事は無理だった。彼の従者である三も同じ。あの時、十と七も一緒にいたわけだからな』
人形の持ち出しは従者同士が監視していた事もあって不可能。
気配を消す魔法があったとしても、全員がアルカイズを認識しており、彼が隠すのも無理がある。
「彼が亡くなった以上、この事はアルカイズ様本人に伝えるべきではないでしょうか? 勝負事とはいえ、命を落としていいとは思いません」
アルカイズが死ねば、継承権の奪い合いが楽になるのだが、メアリはそれを望まないようだ。
「……そうですね。流石にこの事は教えるべきでしょう。キスにも伝えて、他の人形が見つかったかどうかも聞いておくべきです」
アルカイズとキスの犯行でないと判断したのであれば、十の死は伝えておくべき。その上で、アルカイズの人形の事を教える。
それによって、二人から他の人形を見つけたかの報告を得られるかもしれない。
その中に三もそうだが、ディアナの人形が含まれているかどうかが重要になってくる。