計算式
「そうだとしたら、計算式はこうなりますね」
上(色+色)−中(色−色)×下(色+色)の形だ。これの答えを八にするための色でコーディネートしなければならない。
「答えは一つだけでなく、様々な組み合わせが可能ですね。同色を使っても良ければ尚更です」
メアリは当てはまる色がすぐに検討がついたようだ。
「私としては加護を残すため、上の部分を青にしておかないと。それはメアリも同じはずですよ」
上部分。魔法使いなら帽子部分になるが、従者なら上半身、上着に当たる。やはり、刺突物を警戒するなら、服の加護は必要になる。
上半身を青と黒にした場合、足された数字は五になる。そこから逆算していかなければならない。
八=五−中(色−色)×下(色+色)だ。
この時、中と下は掛け算である事から先に計算する事になる。となれば、◯−五=八の◯に入るのは十三。五−◯=八となると計算が合わなくなるので、そう考えた方がいいだろう。だが、普通に考えれば、−の八になってしまうのだが。
「青と黒の上の計算に使うとしたら、十三の数字を中と下で導かなければなりません。ですが、八は八でも」
「分かっています。彼等が鏡に映っても問題なかったのです。試す価値は十分ありますよ。失敗すれば、ちゃんとした八の計算にすれば良いだけです」
他の組み合わせなら、−でなく、八になる計算は可能性だ。
十やカイトの身を守る上で、加護を優先するならば、試してみる価値はある。
この二人が鏡を調べた時、青一色と黒一色の服装に鏡は何の反応もしなかった。
つまり、失敗によるペナルティはない。やり直しは可能。
それならば、まずは安全策を取った方が良いに決まっている。
「……分かりました。こちらも協力している身です。ディアナ様に従います。カ……壱は彼と話し合って、服を決めてください。上はちゃんと黒でないと駄目ですからね」
「承知しました」
ディアナとメアリの指示に従い、二人は八の数字に合わせるように着替える。
カイトと十が話し合う事はなく、十が先に着替えていくのに対して、カイトがその数字に合わせる形になった。
『加護があるにしろ、警戒は怠るな。あの二人が試した時、当然加護を付けた状態にしていたはずだ。君が死ねば、この世界は終了だぞ』
燕尾服による加護は万能ではない。気休めに過ぎない程度。キスやアルカイズが行方不明になっている以上、三や七も死んでいる。二人も加護はあったはずなのだから。
カイトは一呼吸置いて、十よりも先に鏡の前に立った。
一人が立っても何の反応も見せない。
そして、十がもう一つの鏡の前に移動した。