数学
「この文字は従者の部屋にはありませんでした」
カイトが従者の部屋を調べた中で、この文字郡の意味する事柄は無かった。
誰も知らないのであれば、鏡の謎解きに失敗した事によるペナルティが発生した可能性もある。
「先に私が持つ鍵に合う部屋を見つけた方が賢明かもしれませんね。何処かに文字の意味が分かる物があるのかもしれません」
メアリは鏡の謎解きを一旦諦め、別の部屋の探索をディアナに薦める。
彼女が持っているのは書斎の鍵。多くの本があれば、その文字に関する情報が掲載されていてもおかしくはない。
一度開けた鍵はそのままにする。前回、ディアナと十がそこから答えを見つけた可能性もある。
『八という数字が関係するならば、この文字が意味するのは数学だ。数字がある以上、数字もこの世界にあるだろ? 私が知るのは和は足し算、差は引き算、積は掛け算、商が割り算となっている。この言葉自体なければ』
「数学はありますし、計算の言葉も分かります。この文字の意味する事はその可能性が高いですね。ですが……」
死神の助言を素直にメアリ達には伝えられない。試してみる価値はあるのだが、その知識をカイトがどう手に入れたのか。
カイトが知っているのなら、一緒にいるメアリも知っている事になるからだ。
「……ディアナ様、よろしいでしょうか?」
「どうしたのですか? 十から意見を言おうとするのは珍しいですね」
基本、魔法使いが従者に指示をするため、従者から意見を言う事は滅多にない。禁止されてる場合もある。
「あの文字についてですが。私がディアナ様よりも前の主に仕えていた時、見た事があります。この文字は計算を一文字で省略した物です。記号を使わなかったのは謎解きのためかと」
「なるほど……確かに計算が一番腑に落ちます。前の主に感謝しないといけませんね。十は一文字ずつ、どれに当てはまるのかを教えてください」
死神が出した答えを、十は知っていたようだ。それもディアナよりも前の主に仕えていた時に知ったらしい。
主が変わる事はないわけではない。命約による死の身代わりも万能ではなく、寿命ともなれば、普通に亡くなってしまう。
主と従者の物理的な距離によって、命約が発動しない場合もある。その時は主に直接死が訪れる。
カイトもメアリが行方不明になってから、別の主に引き取られたからだ。
「縦に和差差積和となっているのなら、横を計算……それだと二つ余ります。分割部分を縦計算すれば合いそうですね」
メアリは二つの鏡にある線の部分を同じ高さに移動され、計算しやすいようにする。
二つの鏡が三つに分割されているのは分かる。それの横同士、上と上、中と中、下と下を計算。それで三つの文字は使用するが、残り二つの文字が残る。
それを分割部分、糸が張られているのを縦に計算。上の回答と中の回答、中の回答と下回答で計算する。
八という答えが鏡と鏡の間の上部分にあり、矢印が描かれているのだから、縦の計算があるのは間違いではないはず。




