予知通りであるなら
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「大丈夫そうですね。私達の会話が聞こえていたら、余計に動けないはずですから」
ディアナとメアリは無事に一番左側、衣装室の前に到着。アルカイズが後をつけてくる様子はなし。
彼女はメアリの会話時、小さな声ではなく、近くにいた者なら聞こえるような大きさだった。
これはアルカイズに聞こえるように、わざと大きくしたのだろう。その分、ディアナとメアリが協力関係になった事を知られる事になるのだが。
協力関係にならなかった場合、ディアナはアルカイズにつけられていたのかは今になっては不明だ。
ディアナとメアリがやった事を、十を使って行動した可能性もある。だが、所詮は従者であり、メアリよりもアルカイズを察知するのは難しかっただろう。
「それでは私の方から鍵が使えるかを確認しましょう」
「……いいのですか? 人形の事もあります。罠の一つでもあれば、彼が危険な目に……それだけで済むかどうか」
まずはディアナが持つ鍵から試すようだ。勿論、彼女が直接鍵を開けるわけではなく、それは従者である十の役目だ。
だが、鍵を試すにしても、何か仕掛けられている可能性はある。十の安全を考慮するなら、魔法で調べるべきなのだが、ディアナはそれをする素振りがない。
『実はディアナも予知を信じてない……わけではないだろう。そうでなければ、メアリに協力を求めないだろうからな』
「あの人形が予知と関係していると思えば、余計に大丈夫のはずです。メアリが先に調べる方が危険ですね」
「予知通りならですか? ……そういう事ですか。私達も彼の後ろに立っておきましょうか?」
「理解が早くて助かるわ。もし、これで十が死ぬような事があれば、私達の人形があのようになっても、少しは怯えたくて済むはずです」
ディアナは十の後ろに位置に立っていて、メアリとカイトは右側から、アルカイズがいた場合に何も見せないよう、壁になるような位置にいた。
それを止めて、ディアナと同じ場所で立つ事の意味は。
「メアリ様。これはどういう……」
「彼の人形が刺されていたのは見ましたね。単に刺されたわけじゃなく、背中から刺されていました。罠が発動したとして、扉からだと正面からになります。私達が背中側を守れば、その状態にはならないのです」
メアリやディアナはよく観察している。十に似た人形が刺されていただけで驚くものであり、背中からという点を重要視しなかった。
背後を守れば、あの状態になる確率は激減するはず。
しかも、従者同士の争いは禁止されているからこそ、不可能に近くなる。
十は衣装室の扉に鍵を刺した。その結果……