アルカイズの魔法
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「彼女の事は気になりますが、本来の目的は回復魔法の入手。館の主であるゴールド=ゴールを見つける事です。一階はキス様が見るようですから、人形紛失の事もあるので、警戒はしてくれるでしょう」
メアリとカイトは従者の部屋を出て、代わりに零が中に入った。すぐに鍵を締める音がしたのは、内側から鍵を掛ける事が出来るようだ。
カイト達従者の中で、誰も従者の部屋の鍵は所持しておらず、零は本当に睡眠の邪魔をされたくないのか。
もしくは、引き籠もる事で、この場所から動かない事を証明しようとしてるのか。
そうなってくると、部屋の外から監視するのも時間が勿体ない。
調べるのを開始するのは二階から。逆に一階からだと、従者の部屋に意識が向かい、謎解きに集中する事が難しくなるかもしれない。
『キスは一階を調べるようだな。一応はメアリの言葉も聞いてくれたようで助かるが』
メアリとカイトが二階に向かう際、キスは入れ違いで一階へ。その時にメアリが彼女に零の伝言を伝えた。
『代わりに情報もくれたな。彼が他の魔法使いに何か仕掛けるのは無理のはずだが』
キスはメアリにある情報を伝えた。それはアルカイズの行動について。
彼は探知の魔法を得意とする。それを使って、怪しい場所を探っていくわけでは無かったらしい。
『彼女は彼を警戒されたいのか。メアリを不安にさせたいのか。心理戦な面もある。アルカイズの行動は気になるのは確かだな』
アルカイズは探知魔法に長けている上に、気配を消す魔法も得意としている。注意深く見なければ、姿が消えたかのように見えるらしい。
キスはアルカイズの部屋の扉が開き、勝手に閉じる光景を見たらしく、二人が移動する音も聞こえたようだ。
アルカイズ自身だけでなく、三の姿も消したのだろう。三だけ姿が見えていたら、側にいるのを教えているようなものだからだ。
「アルカイズ様に関しては、彼だけに意識を向けるのは危険なので、耳に意識を向ける事にしましょう。目は謎解きの方へ」
『メシアやキス達を遠目で様子見するつもりか、隙あらば、鍵を開けた時に侵入するつもりかもしれないな。その時だけは意識して見た方がいい』
キスはアルカイズと三の移動する足音を聞いている。耳をほんの少し傾けるだけでいい。
気配を消したとしても、争いは禁止のまま。何か仕掛ける事は難しい。
ただし、謎解きの邪魔をするのはどうなのか。更に言えば、鍵を使うところを見つけた時、姿を消して侵入してもおかしくない。
「鍵を開けて、部屋の中に入る時に注意すべきですね」
「その通りです。すぐにドアを締める事。姿が見えなくても、ドアは開けないと中には入れませんから」
死神はカイトに忠告したが、メアリもそこはちゃんと分かってるようだ。
「これは予想ですが、アルカイズはまだ二階にいると思います」
「キス様が一階に降りてきたからでしょうか? ドアが勝手に開いたのを確認しただけですよね? 足音だけだと……」