契約
「君を守るため? 自惚れも華々しいところだよ。メアリでもあるまいし」
ツヴァイはそれを笑いながら、否定する。
「そこを否定するのなら、彼を殺さなかった理由を答えられるはずだぞ。最後まで擬似的世界を壊さないためだとしても、終わり方が中途半端なのは間違いなかった」
アインズはツヴァイがカイトの言葉を否定するのであれば、理由を答える事が出来るはずだと追求する。
「お前がカイトを守ったのも確かだ。犯人達は余計な行動を取り、自滅するのが多数あった。今回もカイトという邪魔者を、途中で殺害しようとしてもおかしくはなかったはず。それのストッパーとしての役割もあったのではないか?」
アインズは他の未解決事件を解決に導いたのは、犯人のミスを誘導する。依頼者が参加する事によって、例外を生み出す。
今回もそういう流れにするのもあったが、ツヴァイがそれを阻止した。だが、結局は自らがバラしてしまっている。
「零……ツヴァイ様と三は僕を仲間にしようともしてました。十は兎も角として、七への牽制も含めていたのでは?」
メアリが事件の関わっている事を隠すのも含まれていただろうが。
「そうだね。そこは認めるよ。七は君を邪魔と思ってたから。メアリの願いを叶えるためにもね」
「そこです。本来の事件で目的は達成したわけではなく、擬似的世界の事件で完成するはずだったのではないでしょうか?」
ツヴァイはメアリの体を使用していた。本来の事件後、手に入れていたわけだ。アインズに似た体を今も手放さないようにしている。
無理に擬似的世界に参加しなくても良かったはず。
アインズが作った擬似的世界を終えた後……というのも、ありえない。
死神の世界が時間に関係しなくても、自身は無関係ではないはず。
「……契約か。メアリの体がツヴァイを拒否し始めたか。メアリ自身が死神になったわけでもなく、君が近くにいるわけでもない。下手すれば、私のところに引き寄せたのも、ツヴァイの仕業だった可能性もあるか」
ツヴァイとメアリは契約を結んだ。
メアリの世界では契約は重要であり、必要。それを死神相手にしたとしても結ばせるはず。
契約がきちんと果たされなかった事で、メアリの器に異変が起きた。メアリの世界での契約の影響もあるのか。
「擬似的世界が終わるタイミングも、ツヴァイ様とメアリ様の結び付きが弱くなり、反発した……事はありませんか?」
最後にカイトを殺そうとしても、そこまで擬似的世界が保たなかったのか。
アインズが作った擬似的世界であっても、ツヴァイが手を加えた事で不完全な状態だったのだから。




