姿
「……今のツヴァイ様の姿。零の姿がそれじゃないでしょうか?」
カイトが指摘したのは死神の今の姿。零の姿だ。何故、それがアインズのミスに繋がるのか。
「へぇ……理由を聞こうじゃないの」
ツヴァイは冗談混じりではなく、真剣にカイトの意外な言葉に耳を傾ける。その時点で、カイトの予想は正しいと思わせる。
「ツヴァイ様はメアリ様の体を自分の物だと言いました。少し前まで、メアリ様の体を使っていたんだと思います。それはメアリ様が会ったとされる死神は、自身の姿をしていたと。だからこそ、メアリ様は自分が死神になったと思ったわけです」
ツヴァイはすでにメアリの体を手に入れていた。死神に時間は関係なく、彼女の体で本人に会いに行く事が出来たわけだ。
その姿になったツヴァイをアインズは見ていた。ツヴァイにメアリの体が定着していたのだとしたら。
「だとしたら、メアリ様の体を使う以前はどんな姿をしていたのかです。それが零の姿ではないでしょうか? 昔の今の体を使い回す事が出来るのだとしたら、アインズ様はその姿のツヴァイ様を忘れていた」
死神が体を何度も入れ替える事が可能だとしたら、その姿を全て覚えていられるのか。
ツヴァイも零の体になっていたとしても、死神である事はバレないようにしていたはず。
「記憶の本を弄るのが初めてだと、ツヴァイ様自身が言ってました。擬似的世界に入る事。その事件に直接関わる事もしなかったのでは? だからこそ、零がツヴァイ様だと思わなかった」
ツヴァイがアインズの邪魔、もしくは黒幕になる事は何度もあったのかもしれないが、直接関わりを持つ事はなかったのではないだろうか。
「そうだな。死神は姿を変化させる事は何度もある。一つ一つ覚える事なんて滅多にない。その姿、零の姿を見たのも手で数えるくらいではないか? メアリの体の方が覚えている」
ツヴァイが零の体を使ったのは数回程度。長く使用していたとしても、アインズの印象には残っていなかった。
メアリの体であれば、アインズも覚えている。絵画室にあった肖像画も、メアリではなく、ツヴァイ。
アインズもその時にツヴァイの介入に気付いたのかもしれないが。
自身に似た姿であれば、印象に残るのは当然だろう。
「カイトが答えられたのも、僕が調子に乗って、口を滑らせたのが原因か。人の事は言えないわね。正解でいいわ。僕に質問をする権利を与える。一から十を答える気はないから。興味がないのもそう」
それはツヴァイの気分次第、興味が引けるかによって、分からない状態で事件が終わる可能性があるという事か。




