驚愕
「何? もしかして、謎解きの報酬は地図と鍵だけじゃなかったって事!? 一つだけなら、ディアナの物になるわね」
次から謎解きの報酬は解いた者とするなら、落ちた物を手にするのはディアナ。一つしかなければそうなる。
「そうだな。ディアナが所有すればいい。ただ、目の前に落ちている以上、見るぐらいは構わないだろ?」
アルカイズの席の近くに何かが落ちた。目を下に向ければ、嫌でも視界に入ってくる。
側にいる三であれば、すぐにでも何かを拾い上げ、テーブルに置く事も出来るのだが、それをしようともしない。それはディアナの所有物と決定したからだろう。
だが、拾う事はせずとも視界に入る。
メアリの席はアルカイズの正面であり、何が落ちたのかが見えなかったのだが、無表情の三の顔が僅かに歪んだのは分かった。
アルカイズはディアナが許可し、テーブルの上に置くまでは見るつもりはないのだろう。三の変化にも気付いていない。
「ちょっと!! 何よあれ!?❳
だが、その隣に座っているキスは落ちている物を見てしまった。彼女が驚くという事は余程の物なのだろう。
「メアリが言ってたのはアレの事なの? それが何で落ちてくるのよ」
天井から落ちてきたのは報酬ではなく、人形のようだ。それをキスは七に確認を取り、彼は肯定するように頷いている。
しかし、人形の存在はメアリや従者から聞いているはずで、それ程驚く事でもないはずだ。
「何をそんなに驚く必要がある? 従者の部屋にあるはずの人形が移動していた事か? それも彼女がそうしたのではないのか? ……っと、これは」
アルカイズもキスの驚きように、視線を人形の方に向けてしまった。そして、彼は人形を見て、息を呑んだ。
「わ、私は新しい人形を置いただけで、こちらに人形を持ち運んでません。食堂の謎も知らなかったので、あそこに設置するのも無理です。私は絵を外しただけですから」
零も人形が見えたのか、アルカイズの質問に対して、否定の言葉を投げた。彼女は十が並び替えた薬草の絵の一つを外しただけ。それによって、シャンデリアの鎖が上に引き揚げられた。それ以外に彼女が何かをした様子はなかった。
「一体何だというのです!! 十はその人形をテーブルの上に置きなさい。従者の部屋にあった人形であれば、魔導具ではないはずです」
ディアナは二人が何に驚いているのかを知るため、十に人形をテーブルの上へ置くように指示した。従者の部屋にあった人形であるなら、魔導具ではない。
それは全部の人形ではないが、メアリが確認している。
『あの時、確認したのは君とメアリ、魔法使いの人形だな。従者の誰かの人形があそこに移動されていたのか?』
今朝、カイトが目を覚ました時に見たのは五体の人形。昨夜は十が自身の人形を見ていたのを確認している。
三と七の人形は昨夜の食事前に確認したのみで、移動させれたのは、二体のどちらかなのか。
零は否定しているが、従者がそれをするにも主の許可が必要になる。しかも、あそこに設置するには先に謎解きをしていなければならない。
十はディアナの指示通り、人形の元へ。三も表情の変化が少しはあったものの、彼は何事もなく、ディアナの前にその人形を置いた。
ディアナの隣にいるメアリ、その後ろにいるカイトも、どの人形なのかを確認する事が出来た。