求め
『そ、そうかもしれないな。もしくは、あの魔物は儀式や今回の出来事と関係がなかった可能性もある』
死神の返答は歯切れが悪い。館の主はすでに殺されていて、その真相を知る方法がないからなのか。
嘘の儀式を教えて、館の主をその魔物に殺させる。だとしても、魔物が生存していた場合、メアリ達も危険になる。
更に言えば、館の主も標的となっていた場合、従者に殺害させるはず。従者達が協力した理由の一つでもあるからだ。
あの魔物は魔法が通じないという見解になっていた。
『魔物の件は終わった事だ。彼女から話の続きを聞かなければ』
確かに館の主がいない以上、再度魔物を召喚する事もない。
「館の主が外にいたのは、僕達から隠れると同時に、儀式の準備をしていたのですか?」
「そうみたいです。そこは零が指示を出してたようですが……魔物に死体に関しては驚きました。それは零も同じようで、ゴールド=ゴールも知らなかったと、彼女が言ってました」
館の主も知らなかったと、零はメアリに伝えたようだ。それに関して、零や館の主が嘘を吐く理由はない。
メアリや零が出会った死神からも何も聞かされてないのだろう。
「……メアリ様はこの世界で何をするつもりなんですか? 別世界という認識だとしても、メアリ様の寿命は変わらない。ディアナ様達を殺害する時点で、それは分かっていると思うのですが」
彼女がこの世界を求めた理由。
別世界だとしても、彼女が死ぬ事には変わりがない。ディアナやアルカイズを殺害を許したのはそういう事だ。
「それに……別世界になった事で、短命が消えていたのなら、ここに来る必要はなかったのではないですか?」
継承権争いが館の主、メアリ、零の三人で仕組んだ事であれば、目的を達成した状況で行く必要はない。
カイトを呪いを治す魔法はない事は分かっているはず。
勿論、それは擬似的世界が始まった時にメアリが気付いた場合だ。
カイトが目覚めたのは館に向かう最中の馬車の中であり、引き返す事も出来た。
メアリはカイトの体調を心配して、戻る事も考えたが、それを彼が引き止めた。
それはメアリが一人で行く事を考慮しての事だが、彼女は事実を伝える事はしていない。
「短命が消えてないのは分かってます。この世界に気付いたのは途中からです。そうなるように仕組んでました。零にも伝えてます。馬車の中で多少の違和感はありましたが……そこからですね」




