居場所
儀式に余計な物は不要で、別の場所へ移動させた可能性は十分ある。
魔法陣や部屋一面に紋様が描かれ、それが召喚の準備になっているのなら、納得出来る。
継承権争いを始める前。事前準備をする時間は館の主や零にはあったはず。
地下にあるのだから、ディアナ達がそれを見つけるのは容易ではないだろう。
だが、部屋にそれらしき魔法陣、紋様は一切描かれていないのだ。
擬似的世界だからといって、準備が変更される事はない。あるとすれば、継承権争いが始まってからになる。
「……儀式ですか? 零は彼女にそのように嘘を吐いたのでしょうね。キス様達を騙すためにも使いましたが……そんな物は必要ありません」
死神を呼ぶ儀式はなかった。地下があるのは、謎を、死体を見つからないようにするため。
キスを騙すのも、メアリを疑わせないようにするため。絵画室の目のせいで、メアリが疑われる可能性もあった。
『零はゴールド=ゴールに儀式が必要だと嘘を吐いたわけだ。二度目ともなれば、何もなしに召喚は出来ないと思わせたかったのだろうな』
零とメアリが会ったのも一度だとして、二度目は召喚の必要があると言えばいい。
「それだったら、儀式が執り行うような格好は必要じゃないですか? そんな体力が残ってなくても、零に任せる事も出来たと思います……するはずですよ」
零が言い出した嘘であれば、彼女が準備するしかない。零に館の事を任せたのも、それが理由なのかもしれない。
『準備は続けていたと思うぞ。零もそうだが、館の主がな』
「えっ!? 館内に紋様は一応ありましたが……館の主は入って来た事はなかったのでは? 僕達はそれを見てないはずです」
儀式の準備を続けていたとしても、館の主が館内に入ってきた事はあったのか。
零が準備を続けてるにしても、メアリ達に怪しまれるのは必至。侵入者の協力をしていると疑われる。
『館内でなければ? 館の主が殺されたのは外。館外だ。彼女は地下ではなく、外で儀式の準備をしていた。出る事は禁じられていて、外に出ていたのは零のみ。その時に手伝いをしていた可能性もある』
館の主は館内にいると思われたが、ずっと外にいた。そこで死神を呼び出す準備をしていたのか。
メアリや零、ゴールド=ゴールドが死神と出会ったのが外であるのなら、同じ状況にしてもおかしくはない。
「そうか!? それは十分あります。魔物の死体も儀式の途中で間違えて、召喚したのかも」




