自殺
この事件が起きたのは館の主とメアリが協力したからこそ。ディアナ達の従者も手を貸したわけだが、メアリが協力しなければ、この事件は起きなかったわけだ。
メアリとカイトは何事もなく、人生を終えていたはず。それを手放したのは彼女になる。
『いや……理由の一つは予想出来るか。確信に近いな。彼女はディアナ達の死ぬのは決定されていたと言っていた。それは間違いなく、過程が違っても確実に起きる。勿論、この場で死んだメアリも例外じゃないだろう』
「……つまり、この事件が起きなくても、メアリ様は死ぬ事になっていた!? それを死神から聞かされたから」
メアリは自身はこの事件に関係なく、死ぬ事を死神に聞かされていた。
簡単に信じる事は出来ないだろうが、混血が短命である事を知っていたら、嘘だとは思えなくなる。
彼女には最初からその先がなかった。
「メアリ様も……ディアナ様達のように死ぬ事が決まっていたから」
「はい。そう聞きました。彼女の言葉は嘘ではない事が分かります。それを無くす事も無理だと」
やはり、メアリは死神から死ぬ事を聞かされていた。しかも、死を消す事が出来ない事も。
館の主も長寿を願ったと、零は言っていた。それは結局叶っていない。死は変えられないのなら、そうなる。
そもそも、館の主は死神と二度会ってなく、零が会ったのなら、その願いを死神が聞いたのかも分からない。
「私自身、誰に殺されたのかも分かりませんが。もしかしたら、自殺を選んでいるのかもしれません。この地下を見つけるのも難しく、謎にする必要があるらしかったので」
謎を残すためには、死体が見つからない状態。行方不明扱いにした方がいい。焼却炉で焼かれた可能性もある。
ディアナ、アルカイズ、キス、メアリ四人の魔法使いが行方不明になった事で、捜索隊が派遣されている。そして、館も調べられてはいるのだ。
地下が見つかってない。謎を残すためには見つけるわけにもいかない。
地下の死体は運ばれたと思われたが、行く方法が落下によるものであれば、地図にその部屋しか映らなかったのも納得出来る。
そして、メアリが誰かに殺されたわけではなく、自殺だとしても。
「……メアリ様は死ぬ前に儀式を終えて、死神に会ったと思いますか……そもそも、儀式自体あったのかも」
メアリがカイトを待っていた部屋を見る。
天井裏からこの場所に行こうにも封鎖された状態だった。
地図を考えると、上から落ちるようになっているはずであり、開いた跡が残っている。
だが、それ以外は何もない。椅子もなければ、ベッドもなく、時計すらも。物が何一つないのだ。




