落下物
「ありがとうございます」
カイトも十から地図と鍵を渡され、頭を下げる。中身を確認してから、メアリの手に。
『君が見てる地図はこの見取り図が元だな。とはいえ、やはり地下一階はないな。地下の存在を知られたくないのか』
「もしくは、別の謎解きで地下の事を知る事が……」
だが、実際に地下の事を知ったの一人。自身で足を踏み入れたのか、連れて来られたのかは不明。後者の可能性が高い。
「周辺の地図はないのですね。敷地内といえ、外の可能性も否めないですから」
メアリは周辺の地図がない事を指摘する。
ゴールド=ゴールが敷地内にいるとするなら、周辺の森も視野に入れておかなければならない。広い空間に小屋があり、そこにいてもおかしくないからだ。
「まずは館の探索から始めろって事でしょ。今回、地図を手に入れたみたいに、どれかの謎で入手出来るんじゃないの? といっても、それぞれ鍵を手に入れたんだから、別行動。謎解きで手に入れた物は自身の物。それを他に教える必要もないし」
食堂での謎解きは全員が同じ場にいたわけで、地図と別の鍵を手に入れた以上、それぞれが別行動での探索となる。
単独で謎解きに正解すれば、他者にそれを教える必要はない。継承権を勝ち取るための勝負でもあるのだから。
「その考えは間違えではないな。だが、部屋の鍵ぐらいは開けておこう。謎が一つの部屋で完結するとも限らないからな」
アルカイズは鍵を使用した後、もう一度閉める事はしないと宣言した。これもある意味では協力関係とも呼べるのかもしれないが。
「その方が助かります。罠の情報も共有出来れば嬉しいのですが。勝負とはいえ、死んで欲しいとまでは思っていませんから」
ディアナは釘を刺すように言う。魔法使い同士、従者同士の争いは禁止されている。他に人数を減らす、脱落される方法はないのか。
謎解きによる失敗は分からないが、ここには魔導具がいくつかあり、罠を用意している可能性もある。
部屋の鍵を開けたままにした時、罠が解除されたのかも分からない。罠を利用して、相手を蹴落とす事を彼女は疑っているのだ。
「それはそうね。私も死にたくはないし。解除した罠を再度設置するのは、争いに含まれたら面倒だから」
キスはチラッと零の方を見る。罠再設置が争いに入るのかを聞きたいのだろう。
「罠を新たに増やすのと同じなので、争いに含まれます。敢えて、解除せずに放置するのは問題ないですが」
罠の再設置はおろか、仕掛ける事自体が争いに含まれるようだ。放置するのは良しとされているようだが、謎解きが関係すれば、自身で解除した方が得な面がある。
「分かりました。本当に互いに争わせる事は無さそうなので、謎解きに集中出来そうです。待たせてしまったけど、今から朝食にしましょうか」
「けど、このシャンデリアが邪魔でしょ。これを元に戻す事は出来ないわけ?」
ディアナの提案にキスは賛成するが、彼女達が座っているテーブルの上には謎解きで降りたシャンデリアがある。
「絵の位置を変えれば、上に上がるのではないでしょうか。私がやってみますので」
十がやったように、零自らが薬草の絵の位置を変えようとする。一つでも外せば、正解ではなくなるので、シャンデリアも上に引き揚げられるはず。
そして、零の言う通りに定位置の場所に絵が外されると、ガゴッ!! と音が鳴り、鎖が上へと引っ張り上げられていく。
「ちゃんと上に上がっていくようだな。……ん? 何か落ちてこなかったか?」
天井から何かがあったのか、シャンデリアにぶつかり、テーブルの上ではなく、床へとボトッと落ちた。