信用
「それも今回は無理になったんだけどね。もしかしたら、前回……別世界で主は失敗したのかな? 反対したのも……なんて。私が言うのもなんだけど」
『それは間違ってないだろうな。君が館の主を殺害するでもなく、この事件に存在した者が殺害した。それが出来たのは彼女かメアリになるだろうな』
擬似的世界での死と現実の死が共有されているのなら、館の主が殺されているのは間違いない。
殺害される順番は変わっているだろうが。
「……零の目的は? 館の主や三達とは違いますよね。そんな口振りでした。それに……別世界の方でも主を殺害している可能性もあります。それと……」
カイトは零に対する質問を一旦区切った。重要な質問を投げつけようとしているのかもしれない。
「館の主は呼び出そうした者……それが死神だったとして、二度会ったのでしょうか? 本当は零が会ったのではないですか?」
「へぇ〜……何でそう思うんですか? そんなに変な事を言ったつもりはありませんよ?」
『零も館の主と同じく混血。アイツは魔法使いではなく、混血に見えていたとしたら』
館の主が魔法使いになったきっかけが死神との遭遇だとして、まだ魔法使いにはなっていない。
零も危険な状況に陥り、死神と出会った可能性は十分ある。遭遇した事で魔法使いに必ずなるとは分かっていないのだから。
それ以外にも零が会ったと思う理由が一つある。
「死神に対しての館の主と零の信用度です」
「信用度?」
「館の主、ゴールド=ゴールが二度会っていたのなら、この世界の事も信じていたと思います。逆に零の方が疑いを持つはずじゃないですか?」
館の主は直接会う事はなく、零から情報を得たのだとしたら。
零は死神からゴールド=ゴールの情報を得るだけでなく、利用するように言われたのか。
館の主も零が彼女の過去の出来事を知り、死神の情報を持ち得ているのなら、手元に置くだろう。
従者にするにしても、死神の使者ともなれば、命約を結ぶわけにもいかない。
だとすれば、黒幕は零になるのか。それとも……
「凄い凄い!! 私も失言を言ったけど、そんな事をよく思いついたね。……正解だよ。壱が言う死神に会ったのは私。過去にゴールド=ゴールが死神に会ったのも事実よ。じゃないと、三達まで使わせて、協力するわけないし。それに……言ったら駄目だね」
零は死神と遭遇した事を認めた。更に言えば、館の主が会った死神と同一人物。
三達は館の主の元従者であり、協力者。『それに……』の後に続く言葉は何なのか。
従者達が館の主を裏切った事を言おうとしたのか。
従者達の目的は立場逆転。それは館の主も含まれる。
それとは別だった場合、どの台詞に言葉を付け足すつもりだったのか。




