長寿
『君が天井裏を移動した事で、地下一階の地図のある程度は埋まっているようだな。とはいえ、彼女が案内しなければ、先に進めなかったか』
零がいるお陰で先に進めているのは確か。最悪、天井裏から突き破って、部屋の中に入るしかなかっただろう。
「……本当ですね。魔導具が関係しているなら、キス様もそれに気付くはず。壊して進めば、すぐに追い付く可能性もありますね」
『その分、破壊する音で零も気付くだろうな。キスと合流するのは、少なからず危険ではある』
キスがカイトを殺害する可能性はゼロではない。
彼が気を失っている間に何が起きたのかも分かっていないのだ。
零からキスがカイトを狙う理由を聞き出す必要もある。
『それと彼女の行先は中央。地図の中心へと移動しているようだ。本来、そこで儀式を執り行うつもりでいたのであれば……』
死神はその先を言わなかった。カイトが薄々ながらも察していると踏んだのだろう。
零達が館の主を殺害しているのであれば、何処に彼を連れて行くのか。
「従者が魔法使いを殺せるのか。立場逆転のための一歩。三達の協力したのも、これが一番の理由だと思うよ」
赤黒の侵入者、館外で三と十に襲撃される前に零がカイトに告げた事だ。
立場が逆転した場合、魔法使いと従者のどちらかに付くのかも質問してきた。
目的の一つに間違いはないのだろうが、零は私達とは言わず、『三達』と別にしている。三達と零の目的は違ったのだろうか。単に今の目的が違うからか。
今の状況を考えると、別世界だと知っているのは零だけなのかもしれない。
三達は主、魔法使い殺しを優先している。それも実行しなければならなかったのか。
館の主がそれを信じなかったのなら、魔法使い殺害をやる羽目にはなるのだろうが。
とはいえ、現実では成功しており、この事件後も魔法使いが行方不明になっている事は幾度もあった。
その方法を従者達に伝えた者がいて、協力する混血の魔法使いがいたのだろう。
それに該当するのは零になる。彼女がこの事件の生存者である可能性が高い。
「主の目的は不老不死……とまではいかなくとも、長く生きる事。回復魔法を手に入れる事です」
館の主は回復魔法を持っていなかった。儀式によって、手に入れようとしていた。
混血は短命であり、脱却する方法を求めていた。カイトの解呪も出来るのであれば、メアリも手を貸すだろう。自身の短命も調整出来れば、尚更だ。




