正体
「……彼女? 零は彼女と言ったような」
カイトは口にせず、頭の中で反芻する。それは死神に確認すると共に、その意味を考えるためだ。
『間違いなく、零は彼女と言葉にしたな。館の主は男……絵に描かれた老人ではなかったという事だ。混血なのだから、納得は出来るだろう』
館の主は混血であると、零は言っていた。そして、老人の絵がゴールド=ゴール、館の主であるとも。
混血は短命であり、老人になるまで生き残っているわけがなかった。
つまり、一世代前のゴールド=ゴールだったとすれはま、間違った事を言ってない事にはなる。
『……メアリを館の主だと疑っているのか? それは間違っているぞ。考えれば、分かる事だ。館の主は君を助けるようにとも言ってない。彼女であれば』
メアリであれば、カイトを助けるように指示を出す。だが、館の主はそれをしていないのであれば=にはならない。
「大丈夫です。メアリ様を疑うように仕向けるため、零は彼女と言ったのかと……ですが、それだと腑に落ちないというか」
零は館の主の正体を騙そうとして、それを成功されている。正体がバレそうと感じたとしても、男だという可能性もあるはず。
カイト達は館の主を目撃してないのだ。女性だと決定付けた理由は何なのか。
『すでにその姿を君は見ているからだ。だからこそ、零は薄々気付いていると感じているのだろう』
「それは……館の主の正体について、貴女は気付いたんですか?」
死神は館の主の正体に気付いている。そうだとしたら、カイトもその人物を目にしているはずなのだ。
『ああ……零の言葉で予想は出来た。君も分かるはずだ。残っている人物は一人しかいないのだから』
メアリと零でなければ、キスでもない。であれば、生き残っている中にはいない事になるのではないだろうか。
だとしても、ディアナと三は除いていいだろう。
ディアナは十が殺害したわけだが、それ以前に年齢が合わない。
混血であれば、ディアナの年齢まで生きるのは厳しいはず。
三に関しては年齢は該当する。カイトや他の従者と近い年齢だろう。
だが、彼女は魔法使いではない。魔力も無ければ、アルカイズの従者になる必要もなかったはず。
自身が魔法使いであれば、そこまで嫌っていなかっただろう。
それにキスに殺られる事もなかった。三が館の主だと言えば、キスも隙を見せてもおかしくなかった。
カイトが知る人物全員が該当しない。だが、正体が分からない相手が一人いたのを思い出す。
三に偽装された死体。彼女の偽装ともあって、女性だった。
とはいえ、偽装のために館の主を首無し死体にするのだろうか。
もしくは、この出来事の間に亡くなって、それを利用する形になったのか。




