彼女
零は武器らしき物を持っていない。武器は十殺害に使用したのか。もしくは、服の袖等に隠して持っているのか。警戒をしなければ、ならない相手だ。
そんな相手が、キスからカイトを守るような台詞が出てきた事に驚きが隠せない。
「何を言ってるんですか!? ディアナ様やアルカイズ様を殺したのは貴方方、従者達だ。メアリを捕らえているのもそう。三、十が死んでいなかった事は知っています。その二人も……誰かに殺されたようですが……キス様が僕を殺す理由はないはずです」
三とカイトが話をしている事は、零も知っているはず。背後から彼を眠らせたのは、彼女の可能性が高い。
今更、そんな嘘でカイトを騙せるわけもない。
「そうですよ。ディアナ様達を殺したのはその従者達。七は失敗しましたけどね。十は私が。三はキス様がです。三とキスが入れ替わってなかったら、話は簡単だったんだけど」
零は隠す事なく、否定もせず、正直に答えていく。
「……素直に答えるんですね。でしたら、何故仲間である十を殺害したのですか? それは館の主の命令? 彼が貴女と話をしているのを聞きました。キスと三の入れ替わりに気付かず、七のように失敗したから」
カイトは零に質問する。彼女が十殺害を認めるのであれば、その理由を聞いても構わないだろうと踏んだ。
「違うから。下手に壱を殺さないため、先に殺す必要があったの。仲間である三が殺された事で、逆上する可能性もあったから。これ以上の話は、私について来てくれたらになるんだけど」
キスも三が入れ替わっているのであれば、キスが再度変身魔法を使用する可能性がある。
騙されないためにも、カイトを先に殺害しようとする事はあるかもしれない。それを阻止するため、先に十を殺した。
だが、それをすれば、キスに対抗するための人数が少なくなるだけで、危険が増えるだけの悪手なのは分かりきってる。
『君を殺さないためという理由は……しかも、館の主の命令だと彼女は口にしていない』
彼女は最初に否定の言葉を言った。それは十がミスをした事による殺害もあるが、館の主の指示も含まれているのか。そこを彼女は明確としていない。
でなければ、カイトを助ける理由が分からない。そんな事を指示するとすれば……
「……その前に一つ。この質問の答え次第で決めます。僕を助けるのは館の主の命令ですか?」
「さっき否定したと思うんだけど? 彼女の命令じゃないから。ここまで来たら、ある程度は分かってるでしょ?」
零は不思議そうにカイトを見る。まるで、カイトが答えを知ってるかのような口振りだ。




