最悪の結果
「最悪の結果ですか……僕自体が消滅するのは仕方ないです。けど、この場だけでもメアリ様を助ける事が出来るだけで満足」
彼にとって、メアリを殺した相手を知れたら良い。そして、その相手を代わりに殺害出来れば十分満足出来る。
それは死神も承知している。カイトはメアリを助ける事に固執していた。
『死ぬ結果は変わらないとして、キスを殺害するのが別人になるのなら、メアリを殺害する相手もそうなる』
零と館の主を殺害したとしても、メアリが死ぬ事に変わりがないとすれば……
「……それは犯人以外、キス様も殺害しないと駄目に」
メアリとキスは協力関係を続けているが、カイトが二人を殺害したら、どうなるのか。
魔法継承の失敗。最初からそれがなかったとして、それをキスが信じるのか。
彼女も命を狙われたからと、継承が嘘だとは断定していない。
キスがカイトとメアリを殺す可能性もある。
そうなるのなら、零達がキスを殺害するのを待つべきか。
メアリを救出するためには、キスの力が必要になるかもしれないのだが。
『忘れてないか? 彼女も死ぬ事になっている。君が零や館の主、キスの殺害に成功したして、結果が変わらないとしたら』
「えっ? だとしたら……一体どういう事に……」
死神がメアリを殺害する理由はない。擬似的世界を終わらせば済む話だ。
『私がメアリに手を出す……事はない。残っているじゃないか。彼女以外にもう一人』
「メアリ様以外に……儀式で呼び出そうとしてる相手にですか!? 結局は成功して」
『違う。君だ。君以外にいないだろう。君がメアリを殺す事になりかねないぞ』
「そんな事があるはずなんて!? ありえませんよ」
カイトはそれを即座に否定する。自身が主を殺害するなんて想像もしてなかったのだろう。
自身が消滅するよりも、メアリの生存を望む程だ。それも現実に変化がなくてもだ。
『結果的にそうなる可能性があるという事だ。もし、最終的にこの館から脱出出来るのは一人だけになったら、どうなる?』
「そんなの決まってます。僕が死ねば」
『それを彼女が許すのか? 君を助けるためだけに、危険を顧みずにここまで来たのだろ?』
カイトがメアリを助けようとするのと同じ様に、メアリもカイトのために命を捨てる可能性は十分にある。
『君が先に自死を選んだとして、彼女がそれを追えば同じだぞ』
メアリだけが生き残った場合、自殺するかもしれない。
つまり、二人だけが生き残った時点で共倒れする事が予想される。
「それは……否定出来ないかもです」
すでにメアリが死んでいると分かっていても、自分を追うために死なせるわけにもいかない。
立場が逆だったとしても、カイトは同じ事をするだろう。




