帳尻合わせ
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「……分かりました。僕はキス様や零を見つけるよりも、メアリ様と合流する事を優先します。そのためにも天井裏から……廊下に出ないと」
擬似的世界において、順番は違えど、彼女達の死は免れる事はない可能性がある。
メアリ達の記憶を元にしているのだから、当然ではある。
だとすれば、キスが殺される事はあっても、逆はない。
犯人が殺される事によって、擬似的世界の終わりはない。
とはいえ、例外はあるだろう。
『……その方がいいだろう。彼女が殺害される前に犯人を特定すれば、あるいは……だが、真実が分かる前に、君が犯人を殺害するのは止めておけ』
キスとメアリは犯人を殺害出来ない。いや、最終的には二人が死ぬ事になると考えた方がいいのか。
本来、キスを殺害するのが七であった場合、すでに死を免れている事になる。
それも帳尻を合わせるように、誰かに殺されるのなら、そこに適応されない人物が介入すれば、変化するはず。
つまり、カイトが零や館の主を殺害する。そうすれば、二人は助かる可能性はある。
だが、それは擬似的世界の中の話であり、現実を変える事は不可能。
答えを知るためには、犯人候補である二人を殺害するわけにはいかない。
彼が自己満足、メアリを擬似的世界だけでも助ける事で済ますのであれば、話は別になるが……その結果、彼は生まれ変わる事も出来ず、消滅する。
「そんな事は……僕の力では」
カイトは従者の中で一番弱かった。死神がいなければ、確実に襲撃された時や七に殺されていただろう。
それは本人も分かっている。ただし、その言い方ては力があれば、実行していると言ってるようなものだ。
『力を手にしても……狙える時が生まれてもだぞ』
死神はカイトに念を押す。
『彼女達を殺害したとして……擬似的世界で確実に消えるかどうかも分からない』
擬似的世界が消えるのは彼が死んだ時。それと犯人に事件の真相を打ち明けられ、決定した時だ。
零と館の主しか残ってなく、殺害したとして、擬似的世界がそれをどう判断するのか。
『とはいえ、擬似的世界が消えず、永遠に続くわけでもない』
「……そうなった時、貴女が強制的に消すわけですか?」
零と館の主をカイトが殺害した時点で、死神は彼が失敗したと判断出来る。擬似的世界を作り出した張本人なのだから、消すのは容易だろう。
しかも、彼女にしたら面白くない結末。真相も分からず、今までしてきた事が水の泡になるのだから。
『かもしれないが……すぐに消すわけではない。君に最悪な結果が出るのかぐらいは確認はする』




