幕間 ー18ー
「いや……私は戻らせてもらう。この場に私がいれば、アイツが来る事はないだろう。敢えて、この死体の数だけにしたのも気になる」
アインズがこの場でツヴァイを待ったとしても、来る事はないと分かる。
いつもなら、ツヴァイが手掛ける事件にアインズが介入した場合、自身の作品だと教える仕掛けをするだけで終わる。
今回もそうだと彼女はアインズに思わせたわけだが、違うのではないか。
擬似的世界はカイトの目覚めと共に再開する。そのタイミングを見計らっての行動なのか。
アインズは自室へ戻る。自然と早足になっているのが彼女自身も分かった。
「……いないな。アイツも私がすぐに引き返してくる事ぐらいは分かっているか。何かを仕掛けるとすれば……」
ツヴァイがアインズに直接的に攻撃を仕向ける事はない。謎解きに関する事のみだ。
とはいえ、死者の記憶の本を改竄する事は不可能。
アインズの記憶の本を掛け合わせるような事は出来るが、結局は元に戻ってしまう。
擬似的世界で出来事を変化させても、本来起きた事を無くす事は無理なのだ。
だとすれば、擬似的世界の介入。今回もすでに一度は入られている。
「流石に本が開いているか。それも……進むペースが早い。私がいない間に様々な事が起きたか」
ツヴァイが三や十の死体を放置したのであれば、従者達に何か起きた可能性がある。
だが、ツヴァイが三や十、零と会話をするのは出来ない。
擬似的世界はカイト視点で進んでいる。
絵画室でツヴァイがこちらを覗く事が出来たのも、カイトがその絵を目にしたからだ。
「最初から零達にさせる儀式に嘘を吹き込んでいたのか。カイトに何かを吹き込んでも、彼女達をどうにかする事は無理だ」
零達に何かをさせるとすれば、儀式自体に何か仕掛けていたか。
「だとしても、カイトと早く合流しなければ……いや、彼等の話を先に整理するべきだ。この擬似的世界も終盤に差し掛かっている。無視すれば、見落とす事になりかねない」
アインズは擬似的世界の本に触れるのを止めた。
他の死神からの情報をカイトに知らせるべきではない。
ツヴァイがカイトに接近していた場合、ある程度は話すべきだろうが、この情報に関して、彼が納得しない可能性も出てくる。
「六つの死体と三つの魂……この事件後、生きている人間がまだ残っていたら……一人しかいないわけだが……そうでなかった場合は……そもそも」
六つの死体と三つの魂の違い。それはツヴァイの間接的ではあるが協力した者と、そうでない者に分かれる。




