合流
「……西側に戻って、廊下に出れるのか試してみよう。キス様が生きてるのなら、形勢は逆転するはず」
三と十がいなくなったのであれば、敵側にいるのは零のみ。それに対して、こちらはカイトとキス。魔法使いがいる方が有利になる。しかも、魔法回数も無視出来るなら尚更だ。
問題があるとすれば、館の主の存在。これに関しては、零に問いただすしかない。
加えて、メアリを人質に取るかどうかもある。
だとしても、彼女の体は儀式に必要であり、魔法も使えるはず。
零、もしくは館の主の口から事件の顛末が語られる事で解決になる。
とはいえ、カイトとしては、メアリを助けた状態で終わりたいだろう。
「……メアリ様を探すか。キス様を見つけるか。キス様が生きていたのなら、こちらとしては助かるんだけど……」
ここまで行くと、メアリが捕らえられている場所は館の中心部。もしくは、天井裏から見えてない場所。
そこは危険を承知で廊下に出ないと無理だが、相手は零一人。格段的に動きやすくなったのは確かだ。
零が三の死体を見つけて、どう動くのか。
十を殺害したのが零と判断したが、キスという可能性も出てきた。
彼女はナイフを所持していた。三の姿で接近は可能。魔法を使うより、怪しまれる事はなかったのかもしれない。
零は彼女の殺害を試みるのか。
キスと三が入れ替わっていたのであれば、休んでいるのが、キスという事になる。
零と十が二人で行動していたのだから、抜け出す事は容易いはず。
もしくは、不意討ちとして、こちらに十か零が来るのを待ち構えているという事も考えられる。
勿論、時間の経過と共に三の姿が戻ってしまったのだから、零も警戒する。
零とキスがどう行動するか予測が出来ない。
『……えるか』
「キス様と上手く合流しないと、間違って攻撃される事があるかも。だとしても、天井裏で通り過ぎるのを待つというのも」
『聞こえているのか。聞こえているのなら、返事をしてくれ。狭く、暗い場所にいるようだが……何処を移動しているんだ?』
「死神!? ……本当に貴女なんですよね?」
『……誰かが介入してきたのか? 私で間違いない……といえど、声だけで判断はつかないか。君の名前や擬似的世界の事を説明可能ではあるが』
「……大丈夫です。少し前……メアリ様と似た声で、僕の頭の中に話し掛けてきて……助言のような言葉を残して、すぐに消えたのですが……僕の事や事件を知ってるみたいで」
カイトの頭に響く声は間違いなく死神の声だと分かる。
少し慌てた感じではあるが、口調や話す雰囲気は変わっていない。擬似的世界の事も知っているのも死神だと判別しやすい。




