入れ替わり
「部屋がズレてる……わけじゃない。あの状態になっているのがおかしいんだ」
カイトが見た死体。この部屋に置かれている死体の違和感。
死体は黒の服を着ていた。その服は魔法使いの物ではなく、黒の燕尾服。
メアリやキスではなく、三の死体が置かれているのだ。
彼女の燕尾服が白ではなく、黒に変わっているのは、死体の偽装のために着替え、侵入者としての姿になったため。
彼女も零……誰かに殺された。十も殺害された以上、あってもおかしくはない。
休んでいる時を狙われたのであれば、抵抗も出来なかっただろう。そうなるとは予想もしてなかったはず。
問題なのは死体の状態だ。
零と十の会話で、三は顔に重症を負ったという事だった。
だが、三の顔は傷一つなく、一目で彼女だと分かるぐらいだ。重症であれば、判断出来ない程になっているはず。
それだけじゃない。彼女の胸にアルカイズとディアナ、謎の死体と同じ物が突き刺さっている。
その場合、この部屋に置かれている死体はキス、あるいはメアリの死体でなければならない。
謎の死体が魔法使いではなく、従者だとしてもおかしくなる。
まず、三と十が殺したキスの死体は何処に行ったのか。
アルカイズとディアナの死体を儀式で使用した以上、彼女の死体も利用すべきだろう。
それに三を殺すよりも先に七が死んでいるのだ。危険を冒さず、使えたはずだ。
女性しか無理という事も、アルカイズの死体が使われている事によって、否定出来る。
「もしかして……キス様は殺されてない? 魔法で入れ替わったのかも」
キスが生存している可能性が出てきた。入れ替わりというよりも、変身魔法を本人だけでなく、三にも使用したのではないだろうか。
ディアナのように得意でない事から、完璧に使いこなせず、重症したような顔にしたのではないか。
「魔法回数も問題ではあるんだけど……実際、使用可能らしいから」
回数制限が課せられているのは嘘ではないが、それ以上に使用する事は可能である事は、カイトの耳に入っている。
これに関してはキスは知らないだろう。だが、自分の身を守るためであれば、ルールを破り、試す事はするだろう。
その結果、キス殺害は三や十相手に厳しくなるはず。無理に等しくなる。
魔法が制御された事で、従者に勝ち筋が見えるわけだからだ。
「零はこれを確認したんだろうか……それが十と別れてからだったら」
零は十がキス殺害の失敗だけでなく、騙された事によって、罰を与えたのだろうか。
「儀式の準備が始まってるなら、死体の数を増やしてでも無理矢理するつもりとか」




