北側
「……十も殺されたのだから、三だって……零だけが生き残るつもりなのかもしれない」
三が零達と別行動、休みたいと十に伝えたのは体を休ませるためではなく、二人を殺害するため。その可能性もなくはないが、かなり低いだろう。
なんせ、三はキス殺害に重症を負っている。顔部分が一番だが、他の箇所も怪我を受けているはず。
それもあって、十も彼女を休ませる事を認めた。そんな状態の彼女に彼を殺せるわけがない。
逆に零が三にキス殺害をけしかけ、彼女を殺そうとした疑いも芽生えてくる。勿論、キスを確実に殺すため、十を向かわせたのもある。
零も十には三殺害を仄めかす事は言ってない。あわよくば、十も殺して欲しかったのかもしれない。
そこまで行くと、キスの魔法回数も無くなっていて、零一人でも殺害可能になっているからだ。
「魔法使いが殺されてるんだ。バレないためにも従者達も?」
結局、三達は零……館の主に利用されただけなのか。
「……まだ下に行く時じゃない。この場所を覚えておくだけにしないと」
もし、零が三を殺害。もしくは、零自身も殺害されていた場合、従者で残るのはカイト一人だけになる。
次に狙われるとすれば、彼になる。
彼が死ねば、擬似的世界は終わってしまう。それは死神が見ていなくても、関係はないだろう。
簡単に見つかるわけにもいかない。
カイトが持つ鍵をそのままにしていたのが、犯人であるなら、天井裏に留まられている可能性もあるが。
東、南、西側の部屋を確認したのだから、北側だけを残しておくわけにもいかない。
死体があるとすれば、キスかメアリのどちらかだ。確率的にはキスの方が高いはず。
ここまでに三が休んでいる部屋も確認出来ていない。
明かりの隙間がない部屋も当然あるだろうし、敢えて地下一階で休むよりも、二階で休んだ方が安全ではある。
「二階に移動してくれてるのなら、助かるんだけど……」
三が休んでいるのが二階の場合、そこまで移動するしかない。
十殺害から、そこまで時間が経過していないのだから、地下一階は安全という事になる。
カイトは急いで、北側に移動すると、当然のように明かりが漏れている隙間が見えてくる。
ここまで来ると、狙っているとしか思えないのだが。
「……えっ!? これはどういう……頭が追いつかないんだけど!!」
カイトが天井裏の隙間から見た光景は予想外の物であり、驚きの連続でパンク状態になりそうになっている。




