疑惑
「……違う。何で僕はメアリ様を疑うような事を思ったんだろう。あの死体が本当にゴールド=ゴールかも分かってないのに……今の悩んでいる姿が、謎の声にとっては面白い物? 僕自身が……」
相手がメアリの声を使った事で、その考えに誘導された可能性もある。様々な可能性にカイトは押し潰されそうな感じになっていく。
死神がいてくれたら変わるのか。先程の事があって、信じてられるのか。
彼の頭の中に話し掛けれるのは死神がしかいない。
彼女は謎解きが好きなのであって、本当にカイトに協力しているのか。
「……進まないと。残りの死体を見てから、もう一度考えよう。証拠がないうちに決めたら駄目だ。そのせいで、色々と見落としてたんだから」
見落としていた事。従者達の死体が偽装であり、生存していた事。
消えた事に対して、ちゃんと考えるべきだった。魔法使いの死体だけが消えてなかった。
死神が持つ彼女達の記憶の本にも、従者達の死は掲載されてなかったのだから。
「それを思い出したら……これもだ。メアリ様が黒幕でない理由がちゃんとあるから」
それも死神が持つ記憶の本によって、メアリの死は確定している。
あの本は死者の記憶から作成されていて、この擬似的世界もそれが元になっているからだ。
「先に誰かがいても、怖がらずに……情報を少しでも手に入れるんだ」
カイトは東側に戻らず、零達が進んで行ったでろう経路を、天井裏からなぞっていく。
西側は明かりの漏れ、天井の隙間があり、廊下側から上を確認すれば、見える可能性も十分。
逆に降りるとすれば、この周辺にあってもおかしくない造りではある。
「声は聴こえてこない……か。二人して見回りを継続しているのか。……それもおかしな話になるんじゃ……」
キス達は殺され、残るのはカイトのみ。勿論、メアリが生存したとしても、考えは同じ。
カイトは抜け出してはいるのだが、二人は捕まった状態でいる。
わざわざ見回りをするよりも、捕まっている部屋で警備していればいいだけの話になる。
零達の中で一人だけが、違った目的があるのかもしれない。
「……えっ!? これはどういう事。本当に……裏切った……」
アルカイズ、謎の死体に続き、西側にある死体が置かれた部屋に到着。
その部屋も見れるようにしてるのは、わざとなのか偶然なのか。
この部屋もアルカイズが置かれた場所同様、薄暗く、僅かな明かりしかない。
逆に謎の死体があった部屋だけが異質だった可能性も。もしくは、確実に見せるようにしていた。
だが、問題があるのはそこじゃない。ここでも死体が謎を生み出してしまっていた。




