死体の数
「この部屋から脱出する方法を見つけないと!! まだ大丈夫だと安心してたんだろう」
カイトは早々に調査を再開する。キスが殺害され、十が零と合流した事を考えると、ここは館内なのか。
廊下側の声が漏れていたのも、二階とは別の階に運ばれている。地下の可能性も十分ありえる。
「メアリ様の生存を確認しなければ!!」
零は四人の死体が集まったと言っていた。
その四人というのは魔法使いになるのではないだろうか。
キス殺害によって、この館にあるのは全部で五体。
ディアナ、アルカイズ、キスの三人の魔法使いと従者の七……だけでなく、三の偽装として使った死体が残されている。
従者の死体も利用するなら、その死体も数に加えるはず。
そうでなかった場合、七の死体も含まれずに、三人と零は言うはずだ。
メアリは器とするため、すでに殺されている。
でなければ、魔法使い四人の死体が揃うわけがない。
カイトが殺害されてないのは、メアリのためだという考えが否定された。
「ドアに仕掛けはない。ベッドや時計も調べないと」
ドアに怪しい箇所はなく、内側から開く要素はない。
力づくなのは最終手段。
カイトが装備していた斧は外に放置された状態か、三達が奪ったのだろう。わざわざ、この部屋に武器を置いておく理由はない。扉を壊すのに利用されるだけでなく、自身の危険を要する事になる。
出来るとすれば、体当たりぐらいか。
その音が響き渡れば、零達がこちらにやって来る。通り過ぎたばかりで、確実に二人の耳へ入るだろう。
「……時計に仕掛けは何度もあったけど」
客室に置かれた時計は隣同士を繋げる穴を隠す役割があった。
ホールに置かれている二つの柱時計は、治療用の薬草もそうだが、魔導具の説明書等が振り子の奥に隠されていた。
従者のベッドは仕掛けではなく、謎解きのヒントとして置かれていたが、ドアを開ける仕掛けにするのは難しいはず。
今回の時計は小さく、壁時計ではなく、床面に設置されている。
その位置に置かれているだけで、十二分に怪しく見えるのではないだろうか。
「……何もなさそう。これも魔導具で、魔力を注がないと駄目なのかも」
カイトは時計の針を回したり、持ち上げてみるが、変化は一向に起きない。
時計に仕掛けはなかった。もしくは、時計は魔導具なのか。
時計ではなくとも、扉が魔力に反応するのかもしれない。
魔法使いだったら、何の問題もない部屋だという事。
解錠する魔法も存在する。キスはそれを使おうとした場面もあったのだから。




